癖になる?肩関節脱臼を繰り返さないためにも積極的な筋トレを!

トレーニング中に肩を痛めてしまったり、歩いていて転んだ拍子に肩関節を痛めてしまうことがしばしばあります。
肩関節は非常に可動域が広い関節なのですが、ほんの些細なことで痛めやすい関節でもあります。

肩関節周辺には非常にたくさんの靭帯があり、そしてこれらをフォローするかのようにローテーターカフ(肩甲下筋棘下筋棘上筋小円筋の総称)が働いてくれているお陰で肩関節の安定性が保たれています。

しかし、一度でも肩を痛めてしまうとこれをきっかけとして肩関節が外れやすくなってしまうことがあります。
このように関節が外れることを『脱臼(だっきゅう)』といいます。
脱臼してしまうと関節周辺の関節包や靭帯のみならず、筋肉や筋膜などもが損傷してしまいます。
これにより激しい痛みや腫れが生じ、その後もちょっとした拍子で関節が脱臼しやすくなります。
脱臼しやすい関節は肩関節ですが、その他にも肘、指、股関節など身体をよく動かす部分で脱臼は多くみられます。

完全脱臼と亜脱臼の違い

関節が完全に外れてしまった状態を『完全脱臼(かんぜんだっきゅう)』といい、外れないまでも関節の位置がずれてしまった状態のことを『亜脱臼(あだっきゅう)』といいます。
亜脱臼は完全に外れてしまっている訳ではないので完全脱臼に比べたら症状は比較的軽度ですが、やはりそれでも関節周辺に痛みと腫れが伴います。
一方、完全脱臼は関節が完全に外れてしまっているので亜脱臼とは比べものにならないほどの痛みがあり、関節を動かすことすらできず、関節包や靭帯の損傷度合いも亜脱臼に比べると重症です。
このため完全脱臼を経験した人の約半数が今後、再び完全脱臼を繰り返さないようにするために外科的な手術を受けるそうです。
亜脱臼になってしまった方でもリハビリもせず放置し続けると完全脱臼に移行してしまう危険性があるので日頃から気をつける必要があります。
完全脱臼をし、手術を受けなかった方の場合は、その後、ほんの些細なことで脱臼を繰り返すようになります。
脱臼が癖になってしまった場合は残る手立ては手術しかありません。

脱臼のメカニズム

もし、脱臼が癖になってしまったら後々面倒なことになるので、そうならないように予防策、改善策を立てておくことが必要です。
予防策を立てる前に、まず、脱臼のメカニズムを知ることが大切です。
肩関節は様々ある関節の中でも非常に多方向に動かせる関節として知られています。
屈曲や伸展、内転や外転、内旋や外旋、また、肩をグルグル回すといった描円運動(びょうえんうんどう)などの動きが可能です。
参考ページ:関節の動きと可動域(肩関節編)
同じ構造を持つ股関節でさえ、ここまで大きく動かすことはできません。

球関節

球関節

何故、肩関節がこれほどまでに多方向に動かせるかというと、肩関節が『ボールとソケット構造』を持つ球関節(きゅうかんせつ)だからです。
肩甲骨の関節窩がソケットで、上腕骨の骨頭がボールに相当し、球関節構造を作り出しているのです。
股関節も肩関節と同じ構造をもった球関節なのですが、それぞれ受け皿にあたる部分の深さに大きな違いにあります。

股関節は受け皿が深いのですが、肩関節はかなり浅い作りになっているため股関節に比べ制限があまりなく様々な方向へ動かすことが可能になるのです。
しかし、受け皿が浅いことで関節が外れやすいという側面もあり、これが肩関節が脱臼しやすい原因の一つになってしまっているのです。
また、球関節には関節唇(かんせつしん)と呼ばれる部分があり、これが受け皿を形成し、上腕骨の骨頭が外れないように護っています。
また、肩関節周辺にはたくさんの靭帯や筋肉があり、それらが活躍することで肩関節の安定が保たれているのです。
癖になって外れやすいというのは、受け皿を縁取っていた関節唇がはがれ、靭帯が伸びてしまっている、あるいは靭帯が切れてしまっているからこのような状態に陥ってしまっているのです。
こうなってしまうと関節が外れやすい状態になってしまい、いわゆる癖になってしまうので手術を余儀なくされてしまいます。
できればこのような状態になる前に何らかの手立てをうつことが大切です。

深部筋肉を鍛えよう

そのためには、肩の深部筋、俗にいうインナーマッスルを鍛えることがとても大切になります。
深部筋に対し表層筋(アウターマッスル)という筋肉がありますが、関節の安定性を高めるという意味では表層筋を鍛えるよりも深層筋を鍛えることの方が重要です。
深層筋(インナーマッスル)を鍛えることで肩関節の安定につながり、再発の可能性を少なくすることが期待できるからです。
肩関節のインナーマッスルは総称して『ローテーターカフ』とも呼ばれ、肩甲下筋棘下筋棘上筋小円筋のなどがそれにあたります。
肩関節脱臼の約9割が『前方脱臼』と呼ばれる脱臼が多いことからこれらが起こらないようにするためにも前方への動きを抑制する棘下筋小円筋を鍛える必要があります。
棘下筋、小円筋を鍛える代表的なエクササイズはエクスターナルローテーションです。

エクスターナルローテーション

(写真1)ファーストポジション

エクスターナルローテーション

(写真2)セカンドポジション

肩のインナーマッスルを鍛えるためには当然、負荷をかける必要があるのですが、このときにダンベルを使用しても良いのですが、どちらかというと『チューブトレーニング』の方をお勧めいたします。
肩を関節をなるべく動かさないようにし、棘下筋小円筋の力だけで外側に引っ張るという動作を意識して行います。
棘下筋小円筋の筋力が増せば肩が前方にずれるのを防いでくれるようになります。
ついつい他の筋肉の力を使って運動動作を行ってしまいがちになりますが、それでは全く意味がないのであくまでも、棘下筋小円筋の力だけを使ってエクササイズを行うようにしてください。
勿論、無理にやると却って痛めてしまうことがあるので注意を払う必要があります。
エクスターナルローテーションは慣れないとフォームがとても難しいのでやはり最初はトレーナーなどの専門家にレクチャーを受けることをお勧め致します。
また、肩の可動域を増やし、外れて間もない時に起こりがちな筋肉の緊張をほぐしていくということも併せて行うこともとても大切です。






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当サイトの編集長の佐藤伸一(さとうしんいち)です。
都内でトレーナーとして約20年活動し、その後、カイロプラクターとして約10年活動していました。
現在はフリーランスで活動していて主に健康や運動に関する情報を発信しています。

公式サイト:
https://shinichi-sato.info/

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