再発注意!ひざの皿がはずれる膝蓋骨脱臼とは|膝関節周囲で起こる様々なトラブル⑷|原因・検査・予防と手術を徹底解説

膝関節の前面にある扁平な種子骨を、一般に『膝のお皿』と呼ぶことが多いのですが、正式名称は『膝蓋骨(しつがいこつ)』といいます。膝蓋骨は人体の中では最大の種子骨で、主に膝の前面を保護する役割を果たしています。

大腿部の大きな長管骨を『大腿骨』といいますが、その先端部正面には溝状に凹んだ箇所があり、膝蓋骨は通常そこにはまるように位置しています。

膝蓋骨は、大腿四頭筋腱に付着し、膝蓋靭帯を介して脛骨粗面に付着します。そのため、大腿前面の筋肉である大腿四頭筋(大腿直筋・内側広筋・外側広筋・中間広筋の総称)が収縮すると、膝蓋骨を通じて膝蓋腱が引っ張られるので、結果的に膝関節を伸展させることができるのです。

膝関節の構造
膝関節の構造

膝関節を曲げ伸ばしする際はもちろん、歩いたり走ったりする際には、常に膝蓋骨に大きな負荷がかかります。しかし、膝蓋骨の裏側には膝蓋軟骨(しつがいなんこつ)と呼ばれる軟骨組織があるので、この存在のおかげで、膝蓋骨が大腿骨の膝蓋面を滑るように動くことができるのです。

膝蓋骨脱臼とは

『膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)』とは、膝に何らかの外力が加わることで、膝蓋骨の位置が定位置から大きく逸脱(いつだつ)した状態をいいます。例えば、膝の皿を強く打ち付けたときや、脛骨に捻じれるような負荷が加わったときなどに、膝蓋骨が大腿骨の溝部分を乗り越えてしまい、膝蓋骨が『脱臼(だっきゅう)』してしまうのです。溝部分を乗り越えることなく、正常な位置からずれた状態なら、膝蓋骨の『亜脱臼(あだっきゅう)』といいます。

膝蓋骨脱臼は、ほとんどの場合、外側に脱臼することが多く、脱臼すると膝関節が痛んだり、腫れあがったりします。膝蓋骨脱臼は、先天的に大腿骨の溝が浅い方や、生まれつき膝蓋骨が小さい方、膝蓋骨に変形がある方が発症しやすいという傾向があります。また、女の子座り(トンビ座り)を幼い頃から多用し、大腿骨と脛骨のラインに狂い(X脚)が生じているなど、後天的な理由でも膝蓋骨脱臼の原因になることがあります。

脱臼は一度なると、よく『くせになる』といいますが、膝蓋骨脱臼も例外ではありません。実に、発症した患者さんの20〜50%が再発を経験しており、膝蓋骨脱臼を繰り返すうちに、最初の頃に比べて痛みを感じたり腫れたりすることは少なくなりますが、常に膝蓋骨の不安定さを感じるようになります。また、膝蓋骨脱臼の再発は、基本的に大腿部の筋力が著しく低下している若い女性に多くみられるので、日頃から大腿前面の筋肉を鍛えておく必要があります。

膝蓋骨脱臼の可能性を調べる方法

『膝蓋骨アプリヘンションテスト』と呼ばれる、『膝蓋骨が(外方へ)脱臼しやすいかどうか』を簡易的に調べる方法があります。テスト方法はそれほど難しいものではないのですが、実施の際は必ず、医師や柔道整復師、トレーナーなど、専門的な知識をもっている方にやってもらってください。

アプリヘンションテストの方法

  1. 検査する膝関節を30°くらいに屈曲させ、患者さんには、なるべく太ももの前面に力が入らないようにリラックスしてもらいます。
  2. リラックスしていることが確認できたら、検者は膝蓋骨をゆっくりと外側へ向かって押していきます。
  3. 陽性の場合、患者さんは膝蓋骨が脱臼してしまう恐怖感(不安感)を感じるとともに、それから逃れるかのように太ももを緊張させてしまいます(正常な場合は、このテストで患者さんが恐怖を感じることはありません)。

膝蓋骨脱臼を予防する方法

膝蓋骨脱臼を予防するためには、大腿部の筋肉を鍛えるのがとても有効です。膝蓋骨脱臼のほとんどは、膝蓋骨が外方に向かって外れることから、膝蓋骨が外方にずれないように、大腿部の内側部分(特に内側広筋)を鍛えることが大切になります。

レッグエクステンション
レッグエクステンション

大腿前面の筋肉を鍛える種目に『レッグエクステンション』と呼ばれるエクササイズがあります。単なる膝の曲げ伸ばし動作を繰り返すのではなく、運動の中盤から後半にかけての動きの中で、股関節の外旋(つま先を外に開く)動作を取り入れることで、大腿部の内側部分(内側広筋)を効率よく鍛えることができます。

こうした予防策を講じていても、やはり脱臼することはあります。その場合、上記の方法に加えて、運動用のプロテクター(サポーター)で物理的に膝蓋骨を支えたり、脱臼しないような動きを学習したりする必要があります。脱臼直後はプロテクターを常用し、症状が落ち着いてきても、再脱臼を予防するために、スポーツなどの機会には着用した方がよいかもしれません。

再発を繰り返して、日常生活でも膝に違和感や不快感を感じる状態が続くようであれば、手術による治療が必要になることもあります。ご相談は、最寄りの医療機関(整形外科)にお問い合わせください。手術では、膝蓋骨が外側に外れないように内側に引っぱる役割を果たす『内側膝蓋大腿靭帯(ないそくしつがいだいたいじんたい/MPFL)』を作り直す再建手術を行うことが多く、患者さんの症状や膝の状態に合わせて適切に行われた場合には、膝蓋骨の安定性が期待できます。

手術をした場合、多少の個人差はありますが、リハビリなどを行いながら、術後しばらくで退院できるようになります。ただし、スポーツを再開するには、歩行のためのリハビリだけでなく筋力の向上が必要になるため、早くても数ヶ月、場合によっては半年以上のリハビリが必要になることもあります。

初めて脱臼したときの対応と「やってはいけないこと」

膝蓋骨が初めて外れてしまったとき、どう対応するかが、その後の再発を防ぐうえでとても重要です。まず大切なのは、慌てて自分で無理に戻そうとしないことです。膝蓋骨脱臼は、膝を伸ばすと自然に元の位置に戻る(整復される)ことも多いのですが、外れた際に軟骨や内側の靭帯(MPFL)が傷ついていることがあり、無理な力を加えると損傷を広げてしまう恐れがあります。

初回脱臼の後は、たとえ皿が元に戻って痛みが引いてきても、「治った」と自己判断せず、必ず整形外科を受診してください。膝蓋骨脱臼では、軟骨のかけら(骨軟骨骨折)が関節内に剥がれ落ちていることがあり、これを見逃すと、後々膝の引っかかりや変形性関節症の原因になることがあります。レントゲンやMRIで膝の状態を確認してもらうことが大切です。

そして、急性期を過ぎたら、再発予防が次のテーマになります。前述の内側広筋を中心とした筋力強化に加え、ジャンプや着地、方向転換の際に膝が内側に入らない(ニーイン)ような身体の使い方を身につけることが、脱臼のクセを断ち切る助けになります。膝の不安定感が続く、何度も外れる、といった場合は、自己流で抱え込まず、専門医に相談して、手術も含めた選択肢を検討しましょう。

まとめ

膝蓋骨脱臼は、膝のお皿(膝蓋骨)が主に外側へ外れる外傷で、大腿骨の溝が浅い人やX脚の人に多く、20〜50%と再発率が高いのが特徴です。脱臼しやすさはアプリヘンションテストで調べられ、予防には内側広筋を中心とした大腿前面の筋力強化が有効です。初回脱臼後は自己判断せず受診し、軟骨損傷の有無を確認することが大切で、再発を繰り返す場合はMPFL再建術などの手術も検討されます。

参考文献・出典

・日本整形外科学会「膝蓋骨脱臼」https://www.joa.or.jp/

・厚生労働省 e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

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