寝たきりになってしまうことも!大腿骨頸部の骨折について|原因・症状・手術と予防法を徹底解説

一般に、年齢を重ねると身体の様々な部分が老化し、傷めやすくなります。中でも、高齢者が寝たきりの介護状態になってしまう最大の原因の一つとしてよく知られているのが、転倒をきっかけとした腰〜下肢の骨折です。

高齢者は、一般に骨が脆くなっている方が多いため、少し転倒しただけでもすぐに骨折してしまうことがあります。これらの骨折の中で、寝たきりの原因につながる骨折として最も知られているのが、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折です。

大腿部と大腿骨頸部の仕組み

大腿部とは、いわゆる太もものことで、その中に入っている長管骨を大腿骨(だいたいこつ)といいます。人間の身体は約200個もの骨で作り上げられていますが、その中でも最も長く、重要な役割を果たしているのが、この大腿骨です。大腿骨は股関節から膝までつながった1本の骨でできており、股関節とつながっている部分を特に大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)と呼びます。

大腿骨頸部の構造
大腿骨頸部の構造

股関節は、寛骨の寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれる受け皿に相当する場所に、大腿骨の骨頭がはまり込む形で構成されています。一見、頑丈そうに見えるこの箇所ですが、大腿骨の外側上部にある大転子(大腿の外側で触れることができる、でっぱった部分)が皮下にあるため、転倒などによって衝撃を受けやすく、その衝撃で、細くなっている頸部に骨折が生じやすいのです。

これは特に、骨密度の低い高齢者にとても多くみられ、ほとんどの場合、歩行が困難になります。大腿骨の頸部には、骨頭まで血液を運ぶ動脈が通っているため、骨折するとその血管まで損傷するケースが多く、そうなると骨頭に血液が行き届かなくなるため、骨折が治りにくくなる(偽関節)ばかりか、骨組織が壊死してしまう(大腿骨頭壊死)こともあります。このため、大腿骨頸部を骨折したことで、そのまま寝たきりになってしまうケースは少なくありません。

基本的に、下半身の骨は上半身の重さをしっかり支えられるように太く丈夫にできていて、成人であれば、たとえ荷重がかかってもそうそう簡単に折れることはありません。若い方の大腿骨頸部骨折は、交通事故や激しいスポーツなど、よほどの衝撃が加わらない限り発症することはまずないと思っていただいてよいでしょう。しかし、高齢者の場合は、筋力の衰えや骨密度の低下などが複合的に影響してくるので、ほんの僅かなダメージでもすぐに骨が折れてしまうのです。例えば、軽く尻餅をついただけで大腿骨頸部が骨折してしまったというケースもあるくらいなので、日頃から転倒しないように注意を払う必要があります。

大腿骨頸部が折れた場合、ほとんどのケースで発症直後からとても激しい痛みを感じるようになります。足の付け根あたりがひどく痛み、歩くことはもちろん、立つことさえ困難になります。高齢者の場合、骨折の中でもこの大腿骨頸部は折れやすい場所で、患者数は年間で非常に多く、しかも高齢化に伴って年々増加してきているので、決して他人事とはいえません。

もし、ご家庭に高齢者がいる場合は、できるだけ転倒しないように、邪魔な荷物を床に置かないようにしたり、手すりをつけたりするなどして、ご自宅をバリアフリー化すると安心かもしれません。ちなみに、大腿骨頸部骨折の患者は70歳代や80歳代に多くみられ、その大半を女性が占めているのが大きな特徴です(女性は閉経後に骨密度が低下しやすいためです)。

もし、大腿骨頸部を骨折してしまったら

もし大腿骨頸部を骨折してしまった場合、症状がヒビだけで済んでいる場合や、ほかに重い持病がある場合などを除き、基本的には外科的な手術を行うことが多くなります。手術内容はそれぞれの症状によっても異なりますが、大腿骨頸部は血流が乏しいため、栄養や酸素が十分に行き渡らず、自然治癒力が非常に低くなっています。

骨折した部分をネジや金属製のプレートなどで固定する術式(骨接合術)が一般的ですが、頸部の骨折で骨頭への血流が損なわれている場合などは、骨がうまくつかないことがあるため、折れた骨頭を人工のものに取り換える「人工骨頭置換術」や、股関節全体を取り換える「人工股関節置換術」が選択されることもあります。

いずれにせよ、手術後はリハビリが必要になり、その間、ベッドで過ごす時間が増えます。高齢者の場合は、特に足腰が急速に弱ってしまうので、寝たきり状態へと移行してしまうことがあります。当然、患部は他の人が触れたり、体勢を変えたりするだけでも激しく痛むため、動くのがおっくうになり、ますます寝たきりに近づくという悪循環を招くこともあります。だからこそ、近年は、できるだけ早期に手術を行い、早くからリハビリを開始して、寝たきりを防ぐという考え方が主流になっています。

大腿骨頸部骨折は、骨折そのものや手術が、心肺機能や免疫力などの低下を招き、その後の健康状態に大きく影響することがあります。だからこそ、骨折を「起こさない」ことが何よりも大切です。いずれにせよ、日頃から骨や筋肉を鍛え、カルシウムやビタミンDの摂取を心がけ、足元には常に注意を払いながら生活することが望まれます。

骨折を防ぐ鍵は「骨粗鬆症対策」と「転倒予防」

大腿骨頸部骨折は、いったん起こると生活の質を大きく下げてしまうため、何よりも「予防」が重要です。予防の鍵は、大きく分けて「骨を強く保つこと(骨粗鬆症対策)」と「転ばないこと(転倒予防)」の2つです。

まず骨粗鬆症対策としては、カルシウムやビタミンD、ビタミンK、タンパク質をバランスよくとること、日光を適度に浴びること(ビタミンDの活性化)、そして骨に刺激を与えるウォーキングなどの運動を続けることが大切です。特に閉経後の女性は骨密度が低下しやすいので、骨密度検査を定期的に受け、必要に応じて医師に相談し、治療を受けることも有効です。

次に転倒予防です。高齢者の骨折の多くは、自宅内のちょっとした段差やすべりなどで起こります。床に物を置かない、電気コードをまとめる、滑りやすいマットを固定する、階段や浴室・トイレに手すりをつける、足元を明るくする、といった住環境の見直しが効果的です。あわせて、下半身の筋力やバランス能力を保つための運動(スクワットや片脚立ちなど、無理のない範囲で)も、転びにくい身体づくりに役立ちます。「最近よくつまずく」「歩くのが不安」といったサインがある場合は、早めに整形外科や、かかりつけ医に相談しましょう。骨と筋肉を守り、転ばない環境を整えることが、いつまでも自分の足で歩き続けるための一番の備えになります。

まとめ

大腿骨頸部骨折は、高齢者が転倒などで起こしやすい骨折で、寝たきりの大きな原因になります。頸部は血流が乏しく、骨折すると骨頭壊死や偽関節を起こしやすいため、骨接合術や人工骨頭置換術などの手術と、早期のリハビリが重要です。閉経後の女性に多く、予防には骨粗鬆症対策(カルシウム・ビタミンD・運動)と転倒予防(住環境の整備・筋力維持)が欠かせません。気になる症状があれば、早めに医療機関に相談しましょう。

参考文献・出典

・日本整形外科学会「大腿骨頚部骨折」https://www.joa.or.jp/

・厚生労働省 e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

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