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- 骨や関節のトラブルとその原因, 肘関節の症状
- 野球肘と遊離軟骨とは?その原因と症状と治療法について
肘関節は強靭な靭帯で補強され結合力がとても強い関節なのですが、ボールを投げるような投球動作を繰り返していると、肘に過剰な負荷がかかり、やがて骨や軟骨、靭帯などが損傷することがあります。
これが俗にいう『野球肘』と呼ばれるスポーツ障害です。野球肘は過度に肘を使うことで起こる肘の障害で、いわゆるオーバーユース・シンドローム(使いすぎ症候群)の一つです。
キネティックチェーンとは
野球の投球動作は何も肩から指先だけの動きだけで行われているわけではありません。
投球動作を行うためにはまず脚を引き上げて身体を逆方向へ捻る動きを行わなければなりません。
そして、前方に脚を踏み出してからは、脚の固定、骨盤の回旋、体幹の回旋、肩の回旋、更に上腕の伸展-内転-内旋、肘の伸展、手首の屈曲、指の屈曲というように、瞬時に下肢⇒体幹⇒上肢へと動きが連動連鎖していかなければなりません。
この一連の動作を『キネティック・チェーン(動きの鎖)』といいます。
より、速いボールを投げるためにはキネティック・チェーンが円滑に機能しなければなりません。
しかしながら、コンディショニングの不良や投球過多による疲労などでキネティック・チェーンに亀裂が入ってしまうと投球フォームが乱れ、肩や肘に過度な負荷がかかるようになり、やがて投球の際に肘に激しい痛みを感じるようになります。
症状が悪化すると、単なる肘の曲げ伸ばし動作だけで痛みが発症するようになり、投球動作はおろか、日常生活にも支障をきたすこともあります。
野球肘の種類
野球肘はほとんどの場合、少年期の頃に発症します。
そして主な原因として挙げられるのが、肘を使いすぎた(オーバーユース)ことによるものです。
少年期頃は骨や軟骨、靱帯、筋肉は未成熟であるため、スムーズな投球動作を行うことが出来きません。
その状態のまま投球動作を繰り返すと、やがて肘に過度の負担がかかるようになり『野球肘』を発症してしまうのです。
しかし、正しい投球動作を身につけていればかなりの確率で回避することは可能です。
野球肘は障害の場所によって大きく『内側型』、『外側型』に分けることができます。
『内側型』は、肘関節を内側から補強する内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)が過剰に引き伸ばされたことで部分断裂を起こし、靭帯が緩んだ状態になります。
成長期では上腕骨の内側上顆に付着する腱を損傷するケースも多くみられます(上腕骨内側上顆炎)、これはテニス肘、ゴルフ肘とよばれる症状にとても近いものがあります。
『外側型』は、過度の外反ストレスによって橈骨頭と上腕骨小頭が圧迫され、やがて、関節軟骨が剥がれてしまう状態(離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん))になります。
遊離軟骨除去手術を要するのはこの『外側型』のタイプです。
遊離軟骨が関節内を動き回ることから、通称『関節ねずみ』と呼ばれています。
この遊離軟骨が関節内を動いている間は痛みを生じることはほとんどなく、投球動作に影響を与えることもありませんが、関節にひっかかると肘がロックされた状態になるため強い痛みを発症します。
具体的な野球肘の治療方法
プロ野球選手の中にも、この障害で手術を余儀なくされた選手が数多くいます。
重度の症状になると骨がもろくなり、関節の変形が起こり、肘が「くの字」に曲がったままになり、まっすぐに伸ばせなくなる場合もあります。
ここまで進行するともはや自然治癒が難しくなります。
『外側型』である離断性骨軟骨炎の治療法には『リハビリテーション』、『ドリリング法』、『骨切り法』、『骨軟骨移植』があります。
初期段階の場合は『リハビリテーション』で改善されることが期待できますが、MRI検査などの結果、手術が不可避の場合は手術を行わなければなりません。
『ドリリング法』は関節鏡視下手術で行われます。
わずか4mmほどの切開で、まずは傷んで不安定になった骨や軟骨、剥がれた部分を摘出し、1㎜程度のドリルを10ヶ所ほど作り、骨髄部分から再生能力の高い細胞を関節面に誘導して再生修復させる手術方法です。
この方法は復帰までの期間は進行度合いにもよりますが約2ヶ月~4ヶ月と期間も短くて済みます。
また、年齢が若いほど再生能力が高いので治りは早くなります。
因みに現在もっとも多く行われている治療法がこの方法です。
『骨切り法』は文字通り、傷んだ部分の骨を削って関節面をずらして止め治す方法です。
切開手術になる為、競技復帰にはリハビリを含め1年近くの期間をようします。
『骨軟骨移植』は広範囲に傷みがある場合や、手術では回復が見込めない場合などに用いられます。
体の他の関節から関節軟骨と小さな骨の柱を採取して埋め込む方法です。
この方法も関節鏡を用いて行います。
先にも述べたとおり、野球肘は、ほとんどが少年期に発症しています。
まだ、自己管理ができない年代なので指導者が管理をし、投球数を制限させたり、肘の負担が大きい変化球は出来るだけ投げさせないなどの注意を払って、無理をさせないように指導にあたらなければなりません。