手首の親指側の腫れや痛み、それはドケルバン病かもしれません!|原因・検査・治療を徹底解説

『ドケルバン病』は、手首の親指側に起こる腱鞘炎の一種です。具体的には、親指を動かす腱(短母指伸筋腱・長母指外転筋腱)が、手首の親指側にある腱鞘の中をくり返し滑走することで、その部分に炎症が起こる病気です。

腱とは、筋肉を骨に結合する繊維状の組織のことで、ドケルバン病では、親指の付け根から手首にかけて走る短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)と、長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)のあたりで炎症が生じます。

ドケルバン病になりやすい方の原因は母指の使い過ぎ

人間が指先を動かすときには、指の筋肉だけでなく、手首から肘にかけての前腕の筋肉が動かなければなりません。この前腕の筋肉の動きを指に伝えているのが『腱(けん)』と呼ばれる細長い繊維状の組織で、手指の骨・腱・前腕の筋肉は常に連動しています。

母指(親指)をパーの形に広げると、手首の親指側に腱が張り、皮膚の下にうっすらと筋のように浮かんで見えます。この短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が、手関節の母指側にある腱鞘(手背第一コンパートメント)と呼ばれるトンネルの中を通過して手指の骨に付着しているので、筋肉が収縮すると、その力が腱を介して伝わり、親指を動かすことができるのです。

親指を頻繁に使うことで、腱と腱鞘が過度にストレスを受け、腱鞘の内部が肥厚(厚く膨らむ)してしまい、結果、腱が圧迫されやすくなります。この状態のまま腱が腱鞘内をくり返し滑走すると、腱鞘の内側と腱の表面に摩擦が生じて、炎症が発症してしまうのです。また、手背第一コンパートメントの内部は、2つの腱を分けて通す隔壁があることがあり、その場合はより狭くなって、圧迫が生じやすいことも一因になります。

ちなみに、短母指伸筋は親指を伸ばす働きをし、長母指外転筋は親指を広げる働きをしている筋肉です。

ドケルバン病になると、『手首の親指側が痛む』『腫れる』『親指を広げると痛みが起こる』といった症状が現れるようになります。ドケルバン病は、特に妊娠・出産の時期の女性や、更年期の女性に多くみられる病気です。

なぜかというと、まだ首がすわっていない赤ちゃんを抱っこする際に、手のひらをめいっぱい広げて赤ちゃんの頭を支えるため、親指側の腱と腱鞘がくり返し負担を受けるからです。また、腱鞘炎に関する記事でも解説したように、更年期を迎えた方や、妊娠中・出産後の女性は、ホルモンバランスの変化により腱鞘炎の発症率が高くなるので、特に注意を払う必要があります。

もちろん、女性だけでなく、パソコンやスポーツ、近年でいえばスマホを長時間使用して親指を酷使する方なら、誰でもドケルバン病になる可能性があります。このように、ドケルバン病はごく一部の人だけがかかる病気ではなく、誰でもなる可能性がある、身近な病気なのです。

ドケルバン病の診断とその治療方法

ドケルバン病の診断には、『フィンケルシュタインテスト』という方法がよく用いられます。親指を握り込むようにして手首を小指側に曲げたときに、親指側の痛みが強くなる場合は、ドケルバン病の疑いがあると判断されます。ドケルバン病の疑いがある方は、腱鞘炎と同様、なるべく早い段階で整形外科の診療を受けることをおすすめします。

ドケルバン病は、基本的に母指の腱の使いすぎで起こる病気なので、あまり親指を使わないようにして、安静を心がける必要があります。そのために、保存療法の一環として『シーネ固定』などの装具で、親指の動きを制限することがあります。装具は、痛みが治まるまでの間つけているのが望ましいのですが、日中はつけていられないという方は、せめて夜間だけでもつけるようにしてください。基本的に、この装具で患部を固定すれば、個人差はありますが、数週間程度で症状がかなり改善することが多いとされます。

痛みが激しい場合は、炎症を起こしている部位に、腱鞘内ステロイド注射をすることもあります。手術による治療方法もありますが、これは保存療法があまり有効でない場合や、仕事柄、手を使うことが多くて安静にできないという方などに用いられる方法で、圧迫の原因になっている腱鞘を切り開く方法です。

腱鞘の鞘(さや)を部分的に切開することで、腱が圧迫されなくなるので、親指を動かしても痛みを感じにくくなります。手術といっても、大がかりなものではなく、『腱鞘切開術』であれば、日帰りで行えることもあります。この手術は身体への負担が少なく、傷跡も小さく残りにくいのがメリットです。

ドケルバン病は、最初のうちは大した痛みではありませんが、放置しておくと、ふたを開ける、ペンを握るといった簡単な動作でも痛みを感じるようになります。痛みが慢性化してしまうと、保存療法が有効でなくなり、手術が必要になってしまう場合もあるので、なるべく早いうちに対応するのが望ましいといえます。

ドケルバン病を防ぐ・悪化させない日常のポイント

ドケルバン病は、こじらせると治りにくくなるため、「親指を休ませる」「無理をさせない」工夫が大切です。だからこそ、日頃の心がけが予防にも改善にもつながります。

最も大切なのは、親指への負担を減らすことです。スマホは親指だけで長時間操作すると負担が集中するので、両手で持つ・他の指も使う・操作時間を区切る、といった工夫が有効です。家事や育児、手作業でも、同じ動作を続けるときは、こまめに手を休め、手首や親指を軽く動かしましょう。痛みや違和感があるときは、サポーターやテーピングで親指〜手首を軽く支えると、余計な動きを減らせます。

特に注意したいのが、産後の抱っこです。赤ちゃんを抱える際に、親指を広げて手首に体重をかける持ち方を続けると、ドケルバン病を起こしやすくなります。抱っこの向きをこまめに変える、手首ではなく腕全体で支える、抱っこ紐を活用する、といった工夫で負担を分散しましょう。また、手や手首を冷やすと腱がこわばりやすくなるため、冷えを防ぐことも予防になります。痛みが続く・抱っこがつらいといった場合は、我慢せず、早めに整形外科(手外科)に相談してください。

まとめ

ドケルバン病は、手首の親指側で、親指を動かす腱(短母指伸筋腱・長母指外転筋腱)とその腱鞘に炎症が起こる腱鞘炎です。母指の使いすぎが原因で、特にスマホ操作や、妊娠産後・更年期のホルモン変化が関わる女性に多くみられます。フィンケルシュタインテストで診断され、治療は安静・装具・ステロイド注射が中心で、重症例では腱鞘切開術が行われます。親指を休め、冷えを防ぐことが予防の鍵です。

参考文献・出典

・日本整形外科学会「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」https://www.joa.or.jp/

・厚生労働省 e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

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