マラソンなどの陸上競技、また、サッカーやラグビー、ホッケーなどのスポーツをしている時に、しばしば恥骨周辺がこわばったり、痛みが伴ってしまうことがあります。
もし、これらの症状があるようなら『恥骨結合炎(ちこつけつごうえん)』を疑う必要があります。

恥骨の構造

恥骨の構造

恥骨は寛骨(かんこつ)の下前部を形成する骨で股間前部の中央で触れることができます。
恥骨結合面では左右の恥骨が線維軟骨性の恥骨結合によってつながっていて恥骨と恥骨がぶつかりあい、傷つく(恥骨結合炎)ことを防いでいます。

しかし、何かしらの負荷がかかると恥骨軟骨に必要以上の負担がかかり、やがてこの部分で炎症が生じ、痛みや不快感がでるようになります。
恥骨結合炎になると主に身体を動かしたりした際に恥骨周辺に痛みが生じるようになり、更に症状が悪化すると内ももや下腹部にまで痛みが広がるようになります。
ときには恥骨そのものが疲労骨折してしまうこともあります。

恥骨結合炎や恥骨が疲労骨折する原因はボールを蹴ったり、急に方向転換してダッシュをするなど、瞬間的に恥骨周辺に過度な負担がかかったことをきっかけに発症してしまうケースが多いようです。

また、女性の場合は出産後に恥骨の中心部分である恥骨結合がきちんと閉じていない状態の時に痛めることが多いと言われています。

恥骨結合炎になってしまったら

恥骨結合炎になってしまったら、まず、早めに近くの整形外科に行かれることをお勧めします。
恐らくX線検査などで恥骨の高さや、恥骨結合に変異などの問題がないかどうかを調べられると思いますが、初期症状の場合はX線に映らない場合もあります。
急性期や発症直後は基本的に保存療法が中心に行われます。
痛みがひどい場合は消炎鎮痛剤やステロイド注射をを用いることもあります。
局所的にが熱を帯びている場合は他の炎症症状と同じように患部を冷やすこともあります。
そして何よりもこの時期は運動やスポーツをなるべく休止して安静にするように心掛ける必要があります。
恥骨結合炎の症状が落ち着いたら徐々にリハビリテーションを行います。
初期のリハビリテーションでは主に水中歩行や自転車型のマシンを使用した免荷訓練(患肢にまったく体重をかけない状態)を中心に行います。
更に症状が落ち着いてきたら股関節を動かすストレッチ、特に大腿部の後面や内側の筋肉のストレッチを行うのも有効です。
ストレッチを行ってもあまり痛みが出ないようになってきたら徐々に筋力トレーニングにも取り組みます。
この頃になれば軽くジョギングやサッカーなども行ってもそれほど支障はでないと思います。
そして言うまでもないのですが、運動後には必ずクールダウンを行い、恥骨周辺のケアを欠かさないようにすることが何よりも大切です。

恥骨結合炎は無理は禁物!再発の恐れあり!

運動を再開し、痛みが再発したら直ちに運動を中止するようにしてください。
痛みがなくなったからといって、今までと同じようにプレーすると再発する可能性がとても高く、また、一流選手ほど再発するリスクが高いので十分注意を払う必要があります。
同じスポーツでも恥骨に負担のかかる『ボールを蹴る』、『脚を高く振り上げる』、『急に方向転換して走る』などの運動動作が多いスポーツ競技ほど気をつける必要があります。
恥骨結合炎はひとたび慢性化すると最悪、スポーツができなくなってしまう場合もあるので無理は絶対にしないでください。
何れにせよ、股関節に違和感を感じたら、素人判断でそのまま放置したり、自己流で治そうとはせず、すぐに掛かりつけの整形外科に診てもらうのが一番大切です。






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当サイトの編集長の佐藤伸一(さとうしんいち)です。
都内でトレーナーとして約20年活動し、その後、カイロプラクターとして約10年活動していました。
現在はフリーランスで活動していて主に健康や運動に関する情報を発信しています。

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