スピードテスト(Speed’s test)
スピードテスト(Speed’s test)
目的
スピードテストは上腕部にある上腕二頭筋(俗にいう力こぶ)と呼ばれる筋肉に問題があるかどうかを調べる検査方法です。
上腕二頭筋は『長頭(ちょうとう)』、『短頭(たんとう)』と呼ばれる二つの頭で構成されています。
長頭はトラブルが非常に発生しやすい場所としても知られていて、一番メジャーなトラブルは『上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)』です。
その他にも『肩上方関節唇損傷(けんじょうほうかんせつしんそんしょう)』、『上腕二頭筋長頭腱断裂』、『上腕二頭筋長頭腱脱臼』などがあります。
上腕二頭筋長頭腱と肩関節(肩甲上腕関節)は隣接しているためしばしば上腕二頭筋長頭腱炎は『棘上筋(きょくじょうきん)』の腱鞘炎と間違われてしまうことがあります。
そのため棘上筋の腱の状態を調べる場合は『アプレイ引っ掻きテスト』、『棘上筋衝突テスト』などの整形外科学検査法を用いて、上腕二頭筋長頭腱を損傷しているのか、あるいは棘上筋腱を損傷しているのかを見分ける必要があります。
実施方法
1. 患者さんを座位にさせます。
2. 検者は患者さんの患側に立ち、一方の手で患者さんの肩に軽くコンタクトします。(あるいは指先で上腕二頭筋の結節間溝を直接触診します)
3. 検者は患者さんに肩関節が90°屈曲(前方拳上)、肘関節が伸展、前腕部が回外位(手の平が上向き)になるように指示します。
4. 検者はもう一方の手を使い、手関節部に荷重をかけます。このとき患者さんは荷重に対して抵抗するように力をいれます。
5. 同様に反対側も実施します。
結果の評価
このテストにより患者さんが結節間溝付近に痛みを訴えたら陽性反応で、上腕二頭筋の長頭部に何かしらの問題(上腕二頭筋長頭腱炎、上腕二頭筋長頭腱断裂、上腕二頭筋長頭腱脱臼)があると考えられます。
また、傷みが関節内部なら『肩上方関節唇損傷(けんじょうほうかんせつしんそんしょう)』を疑います。
因みに上腕二頭筋長頭腱炎は肩関節周囲炎の病態の一つとしても知られています。
参考
上腕二頭筋長頭はトレーニングなどで非常に痛めやすい場所としても知られています。
例えば、インクライン・ダンベルカールと呼ばれる種目がありますが、運動実施の際、インクラインベンチの角度をあまり倒し過ぎてしまうとダンベルカールを行う際に上腕二頭筋の長頭腱で大きなストレスがかかる場合があります。
ベンチプレスを行う際、肩甲骨の寄せ(内転)があまいとやはり長頭腱で大きなストレスがかかります。
これが原因で上腕二頭筋長頭腱炎や上腕二頭筋長頭腱断裂、上腕二頭筋長頭腱脱臼を発症してしまうことがあります。