肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)とは文字通り、肩関節周りに炎症が生じ、肩先あたりに強い痛みがでる症状をいいます。

肩関節周囲炎には明確な定義はなく「有痛性で可動域制限をきたす肩の障害」と、かなりあいまいな表現であらわされています。

発症初期は単に肩こりなどの違和感を感じるだけなのですが、手を真横に挙げる動作や結帯(けったい)動作、結髪(けっぱつ)動作といった手を体の後ろ側にもっていく動作などで肩先に強い痛みを感じるようになり、やがて、ごく限られた可動範囲でしか手が動かせなくなります。
肩関節周囲炎には「発症原因がはっきりしない」ものと「発症原因がはっきりしている」ものに分類され、四十肩、五十肩は「発症原因がはっきりしない」ものに分類されます。

発症原因がはっきりしないもの
 ・四十肩、五十肩

発症原因がはっきりしているもの
 ・インピンジメント症候群、石灰沈着性腱炎、腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱炎

・四十肩・五十肩

四十肩・五十肩とは文字通り40代、50代前後の方に多くみられる症状と定義づけられていますが、実際には10代、20代といったかなり若い年代の方でも発症します。
四十肩、五十肩は疫学的には全人口の5%が罹患(りかん)すると言われており、男性より女性の方が発症率が高いといわれています。
また、発症は利き手の反対側に生じることが多く、通常は左右どちらか一方の肩に症状があらわれますが、ごくまれに両肩同時に発症するケースもあります。
一度、発症した後に逆側の肩が痛くなる罹患(りかん)は30~40%もあると言われています。(勿論、痛めた肩と同じ側の肩で再発することもあります。)
先にも述べたとおり四十肩、五十肩は発症の原因が未だに解明されておらず、病態についてもはっきり解明されていません。
諸説ありますが、外傷や血流障害をきっかけに老化を基盤とした関節包の軽度の炎症が自己免疫反応を引き起こして発症するというのが現在、一番有力な説のようです。

・インピンジメント症候群

“インピンジメント”という言葉は日本語で”衝突“という意味があり、シンドロームは”症候群“という意味があります。
つまり、インピンジメント症候群とは肩関節の衝突病ということになります。
肩関節は上腕骨と肩甲骨で構成されていて上腕骨の骨頭部分が肩甲骨の関節窩と呼ばれる『みぞ』にはまって肩関節を形成しています。

肩関節の構造

肩関節の構造

肩甲骨の関節窩は非常に浅いために動きに対する制限が少ない反面、不安定でずれやすく、脱臼を始めとするさまざまな障害を起こしやすい部分でもあります。
この肩関節の安定性を保つ役割を担っているのがローテーターカフ(ローテーターカフとは棘下筋、小円筋、肩甲下筋など、肩関節の安定性を高めている筋肉群の総称です)と呼ばれる筋群です。

このローテーターカフはなかなか鍛えにくい場所としても知られていて、日頃、まめに運動を行っている方でもうまく鍛えられていないことが多い場所です。
ローテーターカフが弱くなるとやがて肩関節の安定性が保てなり、やがて上腕骨骨頭が上方向にずれ、棘上筋腱(きょくじょうきんけん)が二つの硬い骨にはさまれて摩擦が生じ、炎症を引き起こすようになるのです。

・食石灰沈着性腱炎

一般に石灰沈着性腱炎は40~50歳代の女性に多くみられます。肩腱板内に沈着したリン酸カルシウム結晶によって急性の炎症が生じる事によって起こる肩の疼痛・運動制限です。
この石灰は、当初は濃厚なミルク状で、時間が経つにつれ肩関節付近で石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。
石灰がどんどんたまって膨らんでくると痛みが増し、肩を動かすことが出来なくなります。
そして、腱板から滑液包内に破れ出る時に激痛となるのです。
一見、石灰沈着性腱炎と先に紹介したインピンジメント症候群の判別は難しいのですがレントゲンを撮ればどちらの症状で痛みが出ているのかがはっきりします。(※石灰沈着性腱炎の場合は発生場所がレントゲンに白く写ります。)

・回旋筋腱板断裂

先に紹介したローテーターカフは回旋筋腱板ともいいます。
この回旋筋腱板が何かしらの原因で断裂してしまうことを回旋筋腱板断裂といいます。
回旋筋腱板断裂はラグビーやアメフトなどといったいわゆるコンタクトスポーツで人と激しくぶつかったときや交通事故などで激しい衝撃がからだに加わったときに発症してしまう症状です。
先に紹介した『インピンジメント症候群』が悪化したことで棘上筋腱に亀裂が生じ、腱板が断裂してしまうこともあります。

・上腕二頭筋長頭腱炎

上腕ニ頭筋長頭腱炎は文字通り上腕ニ頭筋長頭腱の部分が炎症をおこしてしまう症状で、腕を挙上するときの運動痛と上腕二頭筋の長頭腱が走行している結節間溝部の圧痛がでるのが特徴です。
主な原因は、加齢による筋力低下、運動前のストレッチ不足、そして筋肉の酷使が原因となることが多いようです。好発年齢は、30才から50才代の男性に多い傾向にあります。
また、ウエイトトレーニングの実施方法を誤っても長頭腱炎が発症することもあります。
特に『インクラインカール』『バーベルベンチプレス』 などの種目では痛めやすく、インクラインカールを行うときにインクラインベンチの角度を低くくしすぎたり、バーバルベンチプレスを行うときに肩甲骨の寄せが甘かったりすると炎症にとどまらず、長頭そのものに負荷がかかりすぎ腱が切れてしまうことがあります。(断裂してしまった状態を上腕二頭筋長頭腱断裂といいます)

肩関節周囲炎の原因とは

「発症原因がはっきりしない」ものにせよ「発症原因がはっきりしている」ものにせよ肩関節周囲炎は多くの場合、不良姿勢が影響してしまっていることが多いようです。
例えば胸椎後弯症などで背中が丸くなってしまっている姿勢になってしまっている方は丸くなっていない方に比べ発症率が高いことが知られています。
背中が丸くなったことで肩関節の構造に歪みが生じ、結果的に棘上筋の腱の通り道が狭くなってしまい腱が炎症を起こしてしまうのです。
また、四十肩や五十肩などでは心身症、更年期障害、風、不眠症、高血圧なども原因になることもあります。

肩関節周囲炎を改善するうえで気をつけなければならない日常動作

肩関節周囲炎は慢性化(長期化)するのでほとんどの人が、「取れない痛み」としてあきらめているのが現状のようですが日常動作を気をつけることで症状がある程度改善されることがあります。
肩関節周囲炎を改善するためにはまず姿勢を正しくするということが重要になります。
姿勢が悪いとはじめのころは単に肩こりや首のこりなどが症状として現れる程度なのですが、そのまま放置しているとやがて肩関節の構造に歪みが生じるようになり肩先に強い痛みを感じるようになります。
特にオフィスワークなどでパソコンと長時間向き合っているような人は気を付けなければなりません。
もし、姿勢が悪くなっていると気が付いたらただちに胸をはり正しい姿勢に戻す必要があります。
このように姿勢を正しくする、体のバランスを気を付けることは肩関節周囲炎を予防改善するには何よりも大切なことなのです。

肩関節周囲炎の改善する運動

肩関節周囲炎は初期の段階で適切な治療を行わないと症状を長引かせたり、更に悪化させてしまうこともあります。
治療方法は様々ありますが、やはり、基本となるのは運動療法です。
いつまでも動かさないでいると腕を動かせる範囲がだんだん狭くなってきてしまいます。
運動は欠かせませんが決して無理をせず、運動動作をゆっくり行うことが大切です。
毎日、少しずつでもいいので続けるようにしましょう。
ここで家庭でも手軽にできる運動療法を1つ紹介したいと思います。
ダンベルを使用した『コッドマン体操』は最も知られている運動の1つです。(アイロン体操などと呼ばれることもあります)
肩があまり動かず、痛みがある人でも無理なく行うことができます。
重さは約2kgを目安にして行ってください。

アイロン体操

(写真1)ファーストポジション

アイロン体操

(写真2)セカンドポジション

・コッドマン体操(アイロン体操)

  1. 「痛めている肩側の手」でおもり(1~3kgくらい)を持ち、上体をやや前傾にさせます。このときなるべく肩の力を抜くようにします。
  2. 手を「前後」方向に大きく振り子のように動かします。10往復を1セットとし、最初は無理をせず1日2~3セット行うようにします。
  3. 肩の痛みがないようなら「左右」「円を描く」運動も追加して行ってください。
  4. なれてきたら、徐々に回数やセットを増やして行きましょう。

このように肩関節周囲炎は運動療法が治療の主体ですが、運動療法のみで治癒するとは限りません。
場合によっては消炎鎮痛剤の投与、外科的な手術が必要となることもあります。
いずれにせよ運動療法を行うにあたっては、必ず整形外科医に相談し詳細な治療方針をたててから行うようにしましょう。

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当サイトの編集長の佐藤伸一(さとうしんいち)です。
フィットネスクラブ、体育施設、大学などでトレーナーとして18年間活動してましたが、約10年前にカイロプラクターとして第二の人生を歩み出しました。
そして2016年4月に第三の人生を歩み出しました。

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