肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ)|肩甲骨と胸郭の「機能的関節」のしくみを徹底解説

肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ)

英語名称

scapulothoracic joint(スキャピュロ・ソラシック・ジョイント)

関節の分類

この関節は、骨どうしが連結する解剖学的な関節ではなく「機能的関節」です。その動きは、肩鎖関節と胸鎖関節の動きに伴って生じます。

解説

『肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ)』は、その名のとおり、肩甲骨と胸郭(きょうかく)の間にある関節です。しかし、肩甲胸郭関節は、他の関節とは異なり、肩甲骨と胸郭を靭帯で固定しているわけではなく、肩甲骨周辺の筋肉によって支えられているのが特徴です。

そのため、肩甲胸郭関節は『浮島(うきしま)のようなもの』と例えられることが多い関節です。また、肩甲胸郭関節は、肩関節の土台となる場所でもあります。

肩甲胸郭関節の動きは、胸鎖関節と肩鎖関節の動きに伴って生じるのですが、実際には、肩甲骨が、外転−内転・上方回旋−下方回旋・挙上−下制といった方向に、まるで胸郭の表面を滑るように動きます。

肩甲骨付近の筋肉の緊張状態などにより、肩甲骨の位置は大きく崩れ、それがもとで、肩の周辺に違和感や痛みが出ることがあります。例えば、左右の肩甲骨の間にある僧帽筋中部や菱形筋群が弱くなると、肩甲骨が、本来の位置から大きく外側へずれてしまい(巻き肩)、肩関節が内側にねじれた状態になって、肩甲上腕関節に悪影響を与えます。これにより、見た目が猫背の姿勢になったり、四十肩・五十肩に代表される肩関節周囲炎が誘発されたりする可能性が出てくるのです。

肩甲胸郭関節は、筋肉や鎖骨を介して連結しているため、肩甲骨と、胸鎖関節・肩鎖関節は、常に連動します。胸郭の背面と肩甲骨の前面が向かい合い、肩甲骨は上腕骨とも連結しているため、肩甲骨の動きに、腕の動きも連動しているのです。

関節の動き

肩甲骨の内転・外転
内転-外転

肩甲骨の上方回旋・下方回旋
上方回旋-下方回旋

肩甲骨の挙上・下制
挙上-下制

関節の傷害

巻き肩・猫背に伴う肩こり、肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)、インピンジメント症候群など

肩甲胸郭関節は「肩の土台」|肩こり・巻き肩のカギ

肩甲胸郭関節は、骨でつながった普通の関節ではなく、肩甲骨が胸郭(背中の肋骨)の上を、筋肉に支えられながら滑り動く「機能的関節」です。この「肩の土台」が正しく働くことが、肩こりや巻き肩、肩の不調を防ぐカギになります。

腕を上げる動作を考えてみましょう。腕を頭の上まで上げるとき、肩関節(肩甲上腕関節)だけでなく、土台である肩甲骨も、胸郭の上を回転(上方回旋)しています。この「肩甲骨と腕の連動(肩甲上腕リズム)」がスムーズだからこそ、私たちは腕を大きく、楽に動かせるのです。逆に、肩甲骨がうまく動かないと、肩関節に過剰な負担がかかり、腕が上がりにくくなったり、痛みが出たりします。

現代人に多いのが、デスクワークやスマホで、肩甲骨が外側に開いて前に傾いた「巻き肩」の状態です。こうなると、肩甲骨を引き寄せる筋肉(僧帽筋中部・菱形筋)が引き伸ばされて弱り、こりや痛みを生むだけでなく、猫背や、五十肩・インピンジメント症候群のリスクも高まります。これを防ぐには、肩甲骨を意識して動かすことが何より大切です。(1)左右の肩甲骨を背骨に寄せるように胸を張る、(2)肩を大きく回す、(3)壁に背中をつけて腕を上下させる(肩甲骨の運動)、といったエクササイズが、肩の土台を整え、肩こりや肩の不調の予防・改善に役立ちます。肩の動かしにくさや痛みが続く場合は、整形外科に相談しましょう。

まとめ

肩甲胸郭関節は、肩甲骨が胸郭の上を筋肉に支えられて滑り動く「機能的関節」で、骨では連結していない「浮島」のような存在です。肩の土台として、腕の動き(肩甲上腕リズム)を支えます。僧帽筋中部や菱形筋が弱ると巻き肩・猫背となり、肩こりや五十肩を招くため、肩甲骨を動かす習慣が大切です。肩の不調が続く場合は、整形外科に相談しましょう。

参考文献・出典

・日本整形外科学会https://www.joa.or.jp/

・厚生労働省 e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

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