顎(アゴ)は、頭部の下部にあり、『上顎骨(じょうがくこつ)』『下顎骨(かがくこつ)』から構成されされる『顎関節(がくかんせつ)』と呼ばれる関節があります。
支点がある上顎骨に対して下顎骨が動くことで口の開閉動作を行うことができます。
しかし、実際に動きを作り出しているのは咬筋(こうきん)を中心とした顎関節周辺にある筋肉の作用によるものです。

このように顎関節は口の開閉動作を行い、物を噛んだり、人と会話したり、呼吸をするといった日常の基本動作に大きく貢献します。その中でも『物を噛む』という動作は人間にとって、とても大切な動作といえます。

単に顎関節は物を噛み、ひきちぎり、呑み込むという動作に関わるだけでなく、顎関節が動くことで唾液の分泌を促したり、食べ物の消化吸収にも大きく関わってきます。
また、顎関節を動かすことで脳を活性化して集中力を高めたり、呼吸動作、特に深呼吸を行う際にも顎関節は非常に大きな役割を果たします。
この顎関節や顎関節周囲の筋肉に問題が生じると顎がスムーズに開閉することができなくなるので、日常動作に支障をきたすだけではなく、顎関節の異常からくる頭痛、肩こり、 腰痛、手足のしびれなど、身体の様々な場所に悪影響を及ぼすこともあります。
このような背景には顎関節が頭蓋骨と頚椎に接する重要なポイントに位置しているということも影響しています。

さまざまな顎関節周辺のトラブル。ときには命の危険が伴うことも….

顎(あご)が強い衝撃を受けて上下顎骨が骨折したり、口を急に大きく開けて顎の関節を脱臼した場合、顎関節周囲に強い痛みと腫れが生じます。
このような場合は骨折が治らないかぎり、また、顎関節の脱臼が整復されない限りは痛みや腫れが収まることはありません。
しかし、このような原因がないにも関わらず顎関節に痛みや腫れが生じることもあります。
一番身近な例としては虫歯や歯周病ではないでしょうか?
虫歯や歯周病は口内細菌の増加によって生じます。
虫歯や歯周病が悪化してそれが顎関節周囲にまで及び、顎関節に痛みや腫れが生じ、ときには歯ぐきなどに膿(うみ)が溜まることもあります。
炎症がさらに悪化すると、顎関節そのものにまで影響を及ぼし、顎(骨)炎になってしまうことがあります。
炎症が主に骨髄に広がったものを『顎骨骨髄炎(がくこつこつずいえん)』 、骨膜( 骨を包んでいる膜のこと)に広がった場合を『顎骨骨膜炎(がくこつこつまくえん)』といいます。
このような状態に陥ると原因となる歯の周囲の歯ぐきが広い範囲で腫れ上がり、激痛を伴い、ときに頬や目のまわりまで腫れが及んでしまいます。
こうなってしまうともはや口の開閉動作がままならなくなるばかりか、頭痛や発熱などの全身症状までもが現れはじめてしまいます。
処置が遅れると炎症が顎骨の周囲の皮下組織まで拡大して『蜂窩織炎(ほうかしきえん)』を起こし、命の危険が伴うこともあります。
『三叉(さんさ)神経痛』『舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)』などの神経痛も、顎関節の痛みの原因になります。
三叉神経痛は主に中高年の女性に多くみられ、口を動かしたり、冷たい空気にあたると顔の片側に激痛が生じます。
舌咽神経痛は、食物を飲み込んだり 、話をする際に喉を中心に鋭い痛みが生じます。
この他にも、『扁桃周囲炎』や『耳下腺炎』、『唾液腺炎』、『急性顎下リンパ節炎』などで、あごに痛みや腫れが生じることがあります。

顎関節の異常の代表格、顎関節症とは

口の開閉動作を行うことができない症状で最も多いのが、やはり『顎関節症(がくかんせつしょう)』ではないでしょうか?
顎関節症になると、口を開閉したり、物を噛んだり、人と会話したり、呼吸をするといった動作を行うと顎関節が引っかかり、時に顎から音がなるようになります。
違和感はやがて、痛みや腫れを伴います。
主な原因は歯のかみ合わせの異常なのですが、ときには顎関節周囲の筋肉の過緊張によって顎関節症を誘発してしまうこともあります。
顎関節症の初期の頃には、夜間、寝るときにマウスピースを用いることで改善されたり、首や肩、顎周辺の筋肉をほぐすことである程度解消される場合もあります。
これらの異常がないにも関わらず口が開かない場合は、精神的なストレスによる不安や緊張が原因で起こる心因性の『開口障害』も考えられます。
顎関節にまつわるトラブルを生じさせなようにするためにも日頃から良く噛んで食べ物を食べる習慣を身につけなければなりません。
これにより顎関節周囲の筋肉を鍛えることにもなりますし、唾液の分泌を促し、食べ物の消化吸収などにも役立ちます。

顎関節にトラブルが生じてしまった場合の対処法

顎炎などで強い痛みや発熱を伴う場合は、先ずは腫れがある患部を冷やすようにしてください。
そしてできるだけ早急に歯医者さんにいき、診断と治療をしてもらう必要があります。
もし、膿がたまっていれば切開して膿を排出し、傷みや腫れが収まるまでは鎮痛剤や抗生物質を摂取し続けなければなりません。
急性の炎症が治まったら、再度、問題箇所の抜歯、腐骨の除去、また、顎関節の噛み合わせに問題がある場合は口腔外科手術を行い、傷みや炎症の根本的原因を取り除くことが必要になります。
何れにしても顎関節周囲の痛みや腫れは放置せずに、早めに治療することが何よりも大切になり、そのことが結果的に身体全体の健康維持につながります。


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当サイトの編集長の佐藤伸一(さとうしんいち)です。
都内でトレーナーとして約20年活動し、その後、カイロプラクターとして約10年活動していました。
現在はフリーランスで活動していて主に健康や運動に関する情報を発信しています。

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