身体に不具合が生じてしまうと日常生活に様々な支障をきたすようになります。
特に症状が出やすい部位としては頚部肩部腰部股関節膝関節などがあげられるのではないでしょうか?

今回は膝関節周辺のトラブルについて取り上げたいと思います。これまでも膝関節については数多く取り上げて参りましたが、今回は意外と知られていない『膝関節の裏面』のトラブルについてご紹介して行きたいと思います。

膝関節の主なトラブル

上記でも述べた通り、膝関節周辺には様々なトラブルが発生します。

  1. O脚の原因と改善法について
  2. X脚の原因と改善法について
  3. 半月板損傷|膝関節周囲で起こる様々なトラブル(1)
  4. オスグッド・シュラッター病|膝関節周囲で起こる様々なトラブル(2)
  5. ジャンパーズニー、ランナーズニー|膝関節周囲で起こる様々なトラブル(3)
  6. 再発注意!ひざの皿がはずれる膝蓋骨脱臼とは|膝関節周囲で起こる様々なトラブル⑷
  7. 関節に水が溜まる原因|膝関節周囲で起こる様々なトラブル⑸

それでは、なぜ、これほどまでに膝関節周辺にトラブルが多発してしまうのでしょうか?
それは膝関節が『立つ』『歩く』『座る』『しゃがむ』などといった、ほとんど全ての日常動作で重要な役割を担っているからです。
一般に『スポーツなどによる膝関節の酷使』『加齢』『膝関節周辺の筋肉の筋力低下や柔軟性の低下』『アライメント異常(X脚、O脚)』などが原因で膝関節にトラブルを起こすリスクが高くなります。
このため、未然に膝関節のトラブルを避けるためにはアライメント異常(X脚、O脚など)を正し、筋バランス(筋力や柔軟性)を整えるために積極的に筋トレやストレッチを行う必要もあります。
しかし、仮にトレーニングやスポーツを行なっていたとしても、酷使しすぎたり、間違った方法を実施していれば却って痛めてしまうこともあるので気をつけなければなりません。

膝裏の痛みの様々な腫れの原因

さてここからは本題の『膝関節の裏面』のトラブルについて解説していきたいと思います。
一口に膝関節の裏側のトラブルといっても実に様々な原因が考えられます。

1. ベーカーのう腫(膝窩のう腫)
ベーカーのう腫(膝窩のう腫)は文字通り、膝窩(膝の裏側)が腫れ、膝を曲げると圧迫感を感じたり、深く曲げることが困難になってしまう病気です。
ベーカーのう腫は膝の裏側にある滑液包(かつえきほう)に水(滑液)がたまる病気で、55~70歳ぐらいの方に良くみられる病気です。
多くは変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)や関節性リウマチに合併して起こります。
膝裏の膨らみは、肉眼でもある程度確認することができますが、より明確に確認するためにはやはり医療機関にいき、エコーやMRIを撮る必要があります。
日常生活に支障をきたしているようなら注射で溜まっている滑液を抜き、ステロイド薬を注射することで滑液の産生を抑える処置をします。
しかし、ベーカーのう腫は一旦症状が改善されたとしても、しばらくすると再発しやすい病気なので経過観察が必要になります。
変形性膝関節症が原因になって発症しているようなら同時にその治療も行わなければなりません。

2. 神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)は先に紹介したベーカーのう腫と異なり、膝裏を叩くと足全体へと痛みが広がるいわゆる放散痛があります。
しかし、神経鞘腫は良性の腫瘍ですので手術で切除すれば症状は改善されます。

3.反張膝(はんちょうひざ)
反張膝は膝関節を伸展させた際に膝関節が過伸展状態になってしまうことを言います。
反張膝は関節がゆるい女性に多く見られますが、必ずしも反張膝の方が膝裏を痛めるとは限りません。
膝関節の伸展動作を抑制する『ハムストリング(半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋の総称)』『腓腹筋』の筋力があれば日常生活に大きな支障をきたすこともないでしょう。
しかし、ハムストリングや腓腹筋の筋力が弱く、その上で膝関節過伸展状態で荷重が加わってしまうと膝裏が必要以上に伸ばされすぎて膝裏に激しい痛みが生じてしまうこともあります。
反張膝の多くは、筋力トレーニングやストレッチング、歩き方などを修正することによって症状が改善されます。

4.下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)
下肢静脈瘤は、足の血流が悪くなることが原因で起こることが多い病気で、膝裏に痛みが出ることがあります。
その他に『足の血管が浮き出る』『ふくらはぎがだるい』『足がむくむ』『こむら返りが起こる』『むずむず感がある』などの症状を伴うこともあります。
主な原因は下腿部にある静脈弁の機能不全です。
弁の機能不全により、足元に血液が溜まりやすくなるので血液の逆流・うっ血が起こってしまいやがて静脈瘤ができてしまうのです。
更に静脈瘤が悪化すると皮膚炎を起こしたり、皮膚が完全に壊死(えし)してしまうこともあります。
また、血液の流れが淀んでしまうことで血栓(けっせん)と呼ばれる血の塊りができやすくなり、これが動脈を塞ぐことで、血の流れが完全に停まってしまい突然死を引き起こしてしまうこともあります。
これがいわゆる『エコノミークラス症候群』と呼ばれるものです。
下肢静脈瘤は比較的、良性の疾患ではありますが、最悪の場合は皮膚炎を起こしてしまうこともあるので、その場合は手術で血管を除去する必要もあります。

5. 膝窩筋の過剰緊張
『膝窩筋(しつかきん)』は大腿骨の外側から脛骨(すねの骨)の上部の後ろ側に伸びている筋肉で、膝の裏側に付いています。
小さな筋肉でハムストリングスの補助筋として作用します。
二関節筋である『ハムストリング』『腓腹筋』の柔軟性がなくなってしまうと膝関節を完全に伸展させることができなくなり、膝がいつも曲がったままになります。
これにより膝窩筋の柔軟性も失われてしまい、やがて膝裏にシコリのようなものができることがあります。
このシコリはいわゆる筋肉の”コリ”なのですが、触られると激しく痛みを伴うこともあります。(いわゆる膝窩痛と言われるものです)

このように、膝裏の異常には様々な原因が考えられます。
痛みや腫れを感じたり、違和感が強い、また1週間以上、症状が続くようなら、早めに整形外科にいき受診して原因を見つけることが何よりも大切です。
整体院や整骨院などでも、様々な治療が行えますが、レントゲンや検査をするための機械の設備がありませんので、より的確な診断を受けるにはまず医療機関に行くことが先決となります。
その上で専門家の指示を仰ぎ、適切な治療を受けるようにしましょう。






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当サイトの編集長の佐藤伸一(さとうしんいち)です。
都内でトレーナーとして約20年活動し、その後、カイロプラクターとして約10年活動していました。
現在はフリーランスで活動していて主に健康や運動に関する情報を発信しています。

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