引き出しテスト:前方(Drawer test-knee:AP)とは|前十字靭帯の損傷を調べる膝の検査の方法と骨・関節の仕組みを徹底解説

引き出しテスト

目的

引き出しテストの前方パターン(前方引き出しテスト)は、下腿部を前方に引っ張って、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい/ACL)が損傷しているかどうかを調べる検査方法です。

通常、このテストを行っても下腿部が前方へ大きく滑ることはありません(厳密にいうと、わずかには動きます)が、前十字靭帯を損傷している場合は、脛骨が前方へと大きくずれます。一般に、脛骨が健側と比べて5〜6mm以上前方に滑った場合は陽性反応とみなし、前十字靭帯の損傷・断裂を疑います。ただし、仮に前十字靭帯を損傷していても、関節包などがその動きを制限し、はっきり滑らないこともあります。

なお、前十字靭帯は、ジャンプの着地や急な方向転換(カッティング動作)、急停止などの際に、膝をひねって損傷することが多い靭帯です。多くは相手と接触しない「非接触型」で受傷し、スポーツ中に「ブチッ」という断裂音とともに受傷することもあります。

実施方法

1. 患者さんを仰臥位(あおむけ)にさせます。
2. 検者は患者さんの患側の下腿部を両手で包み込むように把握します。このとき、患者さんの股関節を45°程度、膝関節を90°程度に屈曲させておきます(後方引き出しテストと同じ肢位です)。

引き出しテスト:前方(Drawer test-knee)
引き出しテスト:前方(Drawer test-knee :AP)

3. 検者は患者さんの患側の足部を固定しておきます。固定の仕方は様々ですが、検者の膝頭などで患者さんの足部を軽く押さえる方法などがあります(もちろん、患者さんが痛がらないよう十分に気をつけます)。
4. 検者は下腿部(脛骨の上端あたり)を、矢印の方向(前方)へゆっくりと引っ張ります。
5. このとき検者は、目視と触診で脛骨の滑り具合(前方への移動量)を確認します。
6. 同様に、反対側(健側)の膝関節も実施し、左右を比較します。

結果の評価

このテストで患者さんが痛みを訴えたり、健側と比べて下腿部(脛骨)が前方に5〜6mm以上滑った場合は陽性反応とみなし、前十字靭帯の損傷・断裂を疑います。ただし、前十字靭帯を損傷していても、後外側や後内側の関節包などがその動きを制限し、滑りがはっきり出ないこともあります。左右差を比較することが大切です。

参考

膝関節の構造
膝関節の構造

仮に引き出しテストを行って陽性反応が現れなかったとしても、損傷した内側半月板が引っかかって下腿部の動きが制限され、結果的に滑りが出にくくなっていることもあります。また、テスト中に「ピシッ」というようなクリック音がした場合は、前十字靭帯の損傷だけでなく、半月板の損傷・断裂も合併している可能性が疑われます。前十字靭帯損傷では、半月板損傷や内側側副靭帯損傷を合併することが多いことが知られています。

後十字靭帯(PCL)との違い・他の検査との関係

膝の十字靭帯には、前十字靭帯(ACL)と後十字靭帯(PCL)の2つがあり、膝の中で交差して、すねの骨(脛骨)が前後にずれないよう安定させています。前十字靭帯は脛骨が前へずれるのを防ぎ、後十字靭帯は後ろへずれるのを防いでいます。引き出しテストは同じ膝90°屈曲の肢位で、下腿を「前に引けば」前十字靭帯、「後ろに押せば」後十字靭帯を調べられます。

なお、前十字靭帯の損傷を調べる検査としては、この前方引き出しテストのほかに「ラックマンテスト」(膝を20〜30°ほど軽く曲げて脛骨を前に引く)があり、こちらの方が感度が高い(受傷直後でも検出しやすい)とされています。実際の診療では、これらの徒手検査を組み合わせ、さらにMRIなどの画像検査で確定診断を行います。膝をひねった後に強い腫れ(関節血腫)や不安定感、痛みが続く場合は、自己判断でスポーツを続けず、整形外科などの医療機関を受診することが大切です。

前方引き出しテストのまとめ

膝の前方引き出しテストは、膝を90°ほど曲げて下腿を前方へ引き、前十字靭帯(ACL)の損傷・断裂を調べる徒手検査です。健側と比べて脛骨が前方へ5〜6mm以上滑れば陽性で、クリック音があれば半月板損傷の合併も疑われます。後十字靭帯を調べる後方引き出しと対をなし、感度の高いラックマンテストや画像検査と組み合わせて診断します。膝の不安定感や腫れが続く場合は、医療機関の受診をおすすめします。

参考文献・出典

・日本整形外科学会「膝前十字靭帯損傷」https://www.joa.or.jp/

・厚生労働省 e-ヘルスネットhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

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