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- オスグッド・シュラッター病|膝関節周囲で起こる様々なトラブル(2)
膝関節周辺は実に様々なトラブルに見舞われる場所です。
今回はそのうちの一つ、『オスグッド・シュラッター病』について取り上げたいと思います。
1900年代初頭、この病気を発見した二人の外科医、『ロバート・ベイリー・オスグッド』、『カール・シュラッター』の名前がこの病名の由来です。
『オスグッド・シュラッター病』は単に『オスグッド』と呼ばれることもあります。(以下、オスグットと呼称します)
このオスグッドは特に10~15歳くらいの成長期の小中学生に多くみられ、サッカー、野球などのスポーツを定期的に行っていて、且つ、膝関節を酷使しすることで発症しやすいスポーツ障害の一つです。
症状としては以下のようなものが挙げられます。
- 膝蓋骨の下部の痛み。押したり圧迫すると強い痛みが伴います。
- 脛骨結節部の突出や腫れ、赤身、熱感がある。(脛骨結節部が剥離している場合は、大きく腫れたり、より強い痛みが伴う)
オスグッドの発生メカニズム
先にも述べたとおり『オスグッド』は成長期の小中学生に多くみられる傷害です。
では、成長期の小中学生が必ず『オスグッド』になるかというと、実は必ずしもそうとは限りません。
『オスグッドになるのか』『ならないのか』は、結局のところ、個人差がとても大きく影響しているのです。
膝関節(しつかんせつ)は、大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)の間にある関節です。
大腿部前面にある巨大な筋肉、大腿四頭筋の腱(大腿四頭筋腱)は膝蓋骨(いわゆる膝のお皿と呼ばれるところ)にくっつき、膝蓋靭帯を経由して脛骨粗面(けいこつそめん:膝蓋靱帯がついているすねの上半部)につながっています。
そのため、膝を曲げ伸ばしする際に大腿四頭筋の強い力は脛骨粗面により強く加わります。
成長期の脛骨粗面には成長軟骨帯(膝関節付近にある軟骨)があるのですが、成人にはそれはありません。
成長の過程で成長軟骨が骨化して、一つの大きな大腿骨(長管骨)になるのです。
成長期に何かしらの原因で大腿四頭筋の伸張力(牽引力)が高まることで脛骨粗面に負荷がかかりすぎ、骨化していない成長軟骨帯の一部が浮いたり剥がれるてしまうこともあるのです。
これがいわゆる『オスグッド・シュラッター病』と呼ばれるもので、好発部位に強い痛みが発症します。
それでは何故、症状に個人差がでてしまうのでしょうか?
オスグッドの症状の個人差
一般にオスグッドの症状は10~15歳の成長期の小中学生で、スポーツを激しく行っている子供に多くみられるのですが、実は全く症状が出ない子供達もいます。
果たして両者にどのような違いがあるのでしょうか?
先にも説明したとおり、主に10~15歳の成長期にある子どもがジャンプやダッシュなどくり返すと、大腿四頭筋のけん引力に脛骨結節部が耐えられず、成長軟骨(骨端線)と呼ばれる軟骨組織周辺に炎症がおきたり、最悪、切れてしまうこともあります。
一般に成長期といっても個人差があり、結果的に大人になったときに同じ身長になったとしても、成長過程の中で急激に身長が伸びる子もいれば、ゆっくり伸びる子もいます。
また、身長が大きくなり始める時期にも個人差があります。
成長期に身長が急激に伸びる子は骨は急速に成長するのですが、筋や腱、軟骨などの軟部組織がその成長に速度に追いついていけないのです。
また、大腿四頭筋の柔軟性のあるなしでオスグッドになりやすいか、なりにくいかも大きく影響します。
大腿四頭筋の柔軟性がない子ども(特に男子に多い)は太ももを深く曲げようとするだけで、脛骨結節部に著しい負担がかかります。
つまり、オスグッドになりやすい子どもは特に大腿四頭筋が異常なほどまでに固いことが多いのです。
このような状態でジャンプやダッシュなどのくり返しの動作を行っていれば、やがてオスグッドを誘発してしまいます。
大腿四頭筋の固さチェック方法
大腿四頭筋が固いかどうかは簡易的に検査を行うことで判断できます。わざわざ専門家に診てもらう必要もありません。
- まず、患者さんをうつ伏せにさせ、膝関節を曲げてもらいます。
- 患者さんの踵がお尻につくように術者は抵抗をかけます。
- このときお尻と踵に隙間がない、あるいは指二本分以下の隙間があく程度なら問題はありません。
しかし、指が四本分以上の隙間があいてしまっているようなら大腿四頭筋がかなり固くなっていると判断することができます(※但し、ズボンの固さ、皮膚の状態(やけどなどで皮膚の弾力性が失われているなど)、脂肪の厚み、筋肉の量などを考慮する必要があります。
もし、上記のテストで大腿四頭筋が固いと判断されたら積極的に大腿四頭筋のストレッチを行うことを心掛けてください。
オスグッドを予防、改善するには
オスグットの兆候が確認したらまずは一刻も早く整形外科や接骨院にいくことをお勧めします。
基本的にオスグットは安静にし、また日頃から大腿四頭筋のストレッチを行うように心掛けていれば1年程度で自然におさまっていきます。
しかし、スポーツを本格的に行っていて、休んでいられないような状態に子供が置かれている場合は積極的に治療を施す必要があります。
- 痛みや炎症があるときには、抗炎症鎮痛薬を使用(内服・外用)したり、アイシングを行ってください。
- 整形外科、整骨院で行う、超音波や低周波などの物理療法も効果的です。
- 痛みがなくなるまではなるべく安静を心掛けるようにしてください。
- スポーツ時には膝サポーターやベルトなどを装着し、負担の軽減をはかるようにしましょう。
何れにせよ日頃から大腿四頭筋のストレッチを行うのが最大のポイントだということを忘れないようにしてください。
この際、効果をはやく得ようとして必要以上に力んだり、反動をつけたりしてはいけません。
いわゆる、ストレッチは弾み反動を用いないスタティックストレッチが望ましいです。
痛気持ちいいという感覚がある程度で行うことが最も効果的です。
生活様式の変化に伴いオスグッドが年々上昇
最近の子供たちは普段の生活の中で正座をする機会が少なくなっていますが、礼儀作法として正座を行う機会の多い武道や書道などをしている子供には、オスグット病が少ない傾向にあります。
このことから、正座は膝周辺の筋肉のストレッチになり、オスグッドの予防に良いといった説もあるくらいです。
また、昔はトイレというと和式トイレが一般的でしたが、今ではほとんどのご自宅は洋式トイレだと思います。
公共施設などでも同様ですが、洋式トイレの普及に伴い、これが膝周辺の筋肉のストレッチをする機会をますます奪うことになってしまったのです。
成長期が終わると骨の成長もほとんど終わり、やわらかかった骨も固まるため、症状は出なくなります。
しかし、大人になっても、身体を酷使するなどにより再び脛骨結節部に強い力が加わると、再発することがあります。
これを、『オスグッド後遺症』と呼びます。