歩いているときや立っているときに何の前触れもなく、突然、膝がガクッと抜けてしまうことがあります。
この現象をいわゆる『膝崩れ(ひざくずれ』といいます。

はじめて経験すると、びっくりしてしまいますが、この『膝崩れ』とは一体どの様な症状でどういうな理由でなってしまうのでしょうか?

膝崩れが起きるさまざまな原因

膝崩れの代表的な原因を以下にご紹介します。

①膝関節周辺の靭帯、半月板などの損傷
膝崩れの原因のひとつに、靭帯の損傷、半月板の損傷が考えられます。
膝関節周辺には実に多くの靭帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯、膝蓋靭帯、膝蓋大腿靭帯、腸脛靭帯など)が存在します。
また、大腿骨と脛骨の間には半月板と呼ばれる三日月型をした軟骨組織があり、内側半月板、外側半月板と呼ばれる2つの半月板が存在します。
靭帯は繊維性の組織で関節の可動域をある程度、制限する働きがあります。
半月板は大腿骨と脛骨がぶつかり合わないように、また、膝関節の屈曲、伸展といった動作を円滑にし、また、歩いたり、走ったり、ジャンプをした時などの着地衝撃を吸収するという重要な役目を果たしています。
これら靭帯や半月板を損傷すると膝に力が入らなくなったり、歩行やランニングなどを行う際、困難な状態になってしまいます。
そして、数時間後には膝の関節内に血液が溜まり、膝関節の屈曲・伸展動作の際に激しく痛みを伴うようになります。
通常、約2~3週間で腫れや痛みがある程度治まり、徐々に動けるようになりますが、このとき、損傷が重度の場合はこの頃から『膝がガクっと抜け落ちる』ような状態に陥ってしまうことがあります。

②神経や血管の障害
神経や血管に何かしらの問題が生じると、大腿部が正常に機能しなくなることがあります。
例えば腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、梨状筋拘縮(りじょうきんこうしゅく)による、梨状筋症候群などが原因で大腿部が正常に機能しなくなることがあります。
特に大腿神経は大腿前面の皮膚の知覚神経、腸腰筋、恥骨筋、縫工筋、大腿四頭筋(大腿直筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋)などの筋肉を支配しているので股関節の屈曲や膝関節の伸展動作が正常に機能しなくなってしまいます。
このことが原因で神経や血流などに影響が出てしまい『膝崩れ』を起こすことがあります。

③臀部、ハムストリングス、腓腹筋などの柔軟性の低下
実は何気に③が原因で膝崩れが起きてしまう方が多いようです。
大臀筋が硬化すると骨盤は後傾します。
それに連動してハムストリングス(大腿部の後面)や、膝窩筋、腓腹筋(下腿部にある筋肉)の柔軟性が著しく低下してしまうので、膝が常に曲がったままの状態になってしまうのです。
もしも、皆さんが仰向けになった際、ご自分の膝が床面からかなり浮いてしまっているようなら筋肉の硬縮による膝折れになってしまう可能性が大いにあります。
このような状態に陥ると立位や歩行時などで突然前触れもなく膝がガクっと抜け落ちてしまうようになります。

④膝関節周辺の筋力の衰え
特に高齢の方であれば、膝関節周囲の筋力が衰えることで、膝崩れを起こすことがあります。
何もないところで転倒するなどの原因は、筋力の低下が原因でなっている場合が多いようです。
また、高齢者においては、自覚症状のないままいつの間にか半月板を損傷しているケースも少なくありません。
自分でも知らないうちに半月板を痛めていて、それがきっかけで膝崩れになりやすい状況に陥ってしまっていることもあります。
膝関節の筋力の衰えを解消する一環でジョギングやウォーキングなどを取り入れる方も多いのですが、着地衝撃が膝に大きな負担となることもあるということも念頭に入れておいた方が良いと思います。(できればそれらの運動を行う前段階として膝関節の可動域を広げるストレッチや、筋力をつけるための筋トレを行うのがベストです。)
また、実施の際には固いアスファルト道路を避けたり、年配の方であればジョギングではなく、膝への負担が少ないウォーキングを中心に健康作りをしてくのも一つの考え方です。

膝崩れを防ぐには

『膝崩れ』の症状を防ぐには、まず何が原因で膝崩れになってしまっているのかという原因を特定しなければなりません。
もし、上記にあげた①や②が原因で発症しているようなら、やはりまず初期の段階で速やかに専門医の元でアイシングや固定療法・リハビリなどをしっかりと行う必要があります。
このとき、何かしらの理由により、早々に治療やヒハビリを切り上げてしまったとしたら後々とても苦労されるかもしれません。
半月板の損傷は、ひざを曲げているときに発症することが多く、この場合、半月板のみならず膝関節周辺の靭帯(特に内側側副靭帯)も同時に痛めてしまうことがあります。
この場合は、後に強い痛みを生じることとなるのでなるべく早期に医療措置が必要となります。
放置しておくとその後、損傷を何度も何度も繰り返すようになり、慢性化してしまうと炎症が恒常的となり、腫れたり血腫ができたりと好ましくない症状で悩まされ続けることになります。
このことがきっかけで関節が変形するなど重度の症状となる前に、適切な処置をすることが肝要です。
膝崩れの症状以外に、痛み、違和感を持つようになっていたら要注意です。
必ず放置することなく医師に相談するようにしましょう。
③の場合は大臀筋、ハムストリングス、膝窩筋、腓腹筋など硬化すると骨盤後傾や膝折れにつながる筋肉の柔軟性を高めなければなりません。
④は膝関節周辺の筋肉を鍛える必要があります。
特に大腿部前面にある大腿四頭筋と呼ばれる筋肉を鍛える必要があるのですが、もし、膝のアライメントが崩れてしまい、膝蓋骨(いわゆるお皿と呼ばれるところ)が位置が定まっていないようならその状況に合わせて内側広筋、あるいは外側広筋を鍛える必要性があります。
こちらも専門医かトレーナーに相談されると良いと思います。
運動不足を自覚している方であれば、日常の何気ない動きでも膝を痛める可能性があることを知っておき、急な動きを避ける工夫もまた大切になります。






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当サイトの編集長の佐藤伸一(さとうしんいち)です。
都内でトレーナーとして約20年活動し、その後、カイロプラクターとして約10年活動していました。
現在はフリーランスで活動していて主に健康や運動に関する情報を発信しています。

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