筋バランスが崩れる原因

筋バランスが崩れる主な原因は怪我や事故などによる後天的なものや、産まれ持った先天的なものを除くと、

  1. 生活習慣(利き手・利き足などの存在)
  2. アンバランスなトレーニング方法の実施(スポーツ動作などの特異的なものを含む)
  3. 普段の姿勢

の3つに集約されるのではないでしょうか。

生活習慣(利き手・利き足などの存在)

近年、我々の日常生活は文明の発達とともに分業、オートメーション化され、更に交通機関や運搬機器(エレベーター、エスカレーター)を日常的に多用することにより、身体を使う機会が極端に少なくなりました。
当然、このような生活を続けていればやがて使われていない筋肉は萎縮し、力が充分発揮できなくなることは容易に想像できます。

そればかりか、筋の柔軟性が低下し、関節可動域(ROM)も狭くなってしまうので、やがて筋肉や骨をはじめ、関節や靭帯、腱といった組織にまでトラブルを起こすようになってきます。

また右利き、左利きといった利き手、利き足の存在が人間の筋バランスの悪さに拍車を掛けてます。(極端な筋力差がある場合です)
つまり、利き手、利き足の存在により、普段、使用される筋肉に筋力、柔軟性に左右差が生じ、筋バランスに捻れが生じるのです。
上肢だけの左右差であれば問題も少ないでしょうが、体幹、下肢などの筋肉に筋バランス(筋力、柔軟性バランス)の乱れがあると骨格そのものに捻れが生じてしまうのです。
例えば腹直筋の深部に腸腰筋(腸骨筋、大腰筋の総称)という筋肉がありますが、実はこの腸腰筋は股関節を屈曲させる役割の他に骨盤の安定性などにも関与しています。
腸腰筋の筋バンランスに左右差があると腸腰筋の強い方の骨盤は前傾(AS)し、弱い方の骨盤は後傾(PI)する傾向にあるので、結果、腸骨や関節窩の位置に微妙な変化をきたし骨盤に捻れが生じることになるのです。
骨盤は仙骨(仙椎)を経て脊柱(腰椎)に繋がっているので、骨盤の捻れは当然、骨盤周囲だけに留まらず、全身に派生していくのです。
更に日常生活における姿勢の取り方も左右均等ではないということも問題です。
例えば立って人を待つときなど場面でどちらか一方の脚により体重を掛け、腰をその方向にスライドさせる姿勢をとる人を多く見かけます。
このような腰のアンバランス姿勢の繰り返しはやがて股関節周辺筋群にワンサイド伸張、逆サイド短縮をもたらします。
股関節の傾きは骨盤から脊柱へと連動し、やがて肩の水平ラインも崩れていくのでその代償を頚部が帳尻を合わせる形で逆サイドに傾きを作るのです。
片側だけ肩が凝る、片側だけ腰が痛む、片側だけ膝や足首が痛むとういう経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
これらの原因は筋バランスの乱れ、特に筋力・柔軟性の左右差によってもたらされている可能性がとても高いのです。

アンバランスなトレーニング方法の実施(スポーツ動作などの特異的なものを含む)

我々は日ごろの運動不足をトレーニングジムでのトレーニング(ここでのトレーニングは主としてレジスタンス・トレーニングを意味しています)により帳尻を合わせようとしています。
しかし、一般にトレーニングジムに通っている方のほとんどは、知らず知らずのうちにアンバランスなトレーニング方法を実施してしまい、不快症状を治すどころか、逆に更に症状を悪化させてしまっているのです。
つまり得意な動きに走ってしまい、弱いところ(いつも使っていないところ)とのギャップが益々広がってしまうのです。
また、この傾向は普段フリーウエイト(ダンベルやバーベル)を使用しないマシンユーザーに多く見られます。
例えば、ショルダープレスというマシンを使用した際、ほとんど、右側の筋肉しか使用せず、体に捻れが生じているという状態でも運動動作は可能なのです。
つまり、ウエイトスタック方式に代表されるレジスタンスマシンの大部分はバランスを伴わないので、ウエイトが上下に動いてさえいれば正しくできているものとユーザーは思い込んでいるのです。
このような状況でトレーニングを行なっていると筋バランスの乱れに拍車を掛けることになるのです。
皆さんはスポーツクラブで体を捻りながらマシンと格闘している方を見たことはありませんか?
また、ストレッチを行なう際に知らず知らずのうちに『やりやすい側の筋肉ばかりストレッチしてしまう』という方もとても多いと思いますが、これもやはり筋バランスの乱れに繋がります。

普段の姿勢

普段の姿勢が悪ければ次第に身体にひずみが生じ、身体に様々な不快症状をもたらします。
悪い姿勢(習慣)を出来るだけ日常生活の中から排除しなければ正しい姿勢づくりの改善には繋がりません。
何が悪い姿勢なのか、そして何故悪いのかを理解することは正しい姿勢作りにはもとても重要です。

休めの姿勢

いわゆる『休め』の姿勢で、例えば立って人を待つときなどの場面でどちらか一方の脚により体重を掛け、腰をその方向にスライドさせる姿勢のことです。
このような腰のアンバランス姿勢の繰り返しはやがて股関節周辺筋群にワンサイド伸張、逆サイド短縮をもたらします。
股関節の傾きは骨盤から脊柱へと連動し、やがて肩の水平ラインも崩れていくのでその代償を頚部が帳尻を合わせる形で逆サイドに傾きを作るのです。
片側だけ肩が凝る、片側だけ腰が痛む、片側だけ膝や足首が痛むという経験をお持ちの方は無意識のうちにこの姿勢になっている可能性があります。

片側の肩にいつもショルダーバックをかける

上記の姿勢に酷似していますが発症は腰部からではなく肩から現れます。
日常的に同じ側の肩にショルダーバックをかけたり、あるいは片側だけでいつも荷物を持ってたりすると肩の水平ラインが崩れるので、その代償を股関節周辺の筋群や体幹部が逆サイドの傾きを作ることでつじつまをあわせようとします。
解りやすくいうと肩が上がっている側、つまりショルダーバックを持っている側と反対側の体幹部が常に短縮した状態になってしまうことで片側の肩や(ショルダーバックを持っているが側)、反対側の腰部に負担をかけてしまうのです。
片側だけ肩が凝る、片側だけ腰が痛むという方はひょっとしたらこのような姿勢が習慣化しているのかもしれません。
また、バックを持っている側の腕は持っていない側に比べ、歩行時の腕の振りがあまいので筋肉があまり使われず結果的に肩や腕周りのサイズなどにも左右差がでるようになります。

内股姿勢

特に男性より女性に多く見られる姿勢です。
脚を内股にして立つ方は股関節が過剰に内旋しているので常に大腿骨を内側に捻るような姿勢になるため股関節が外へ捻られて大転子が飛び出します。
その結果、大臀筋や梨状筋を始めとする股関節外旋筋がルーズになるため見た目、お尻が大きくなっているように見えるばかりか、筋バランスが崩れ、腰椎前湾症になってしまう可能性が高くなります。
勿論、X脚、つまりニーイン・トゥーアウト(膝が内側に入り、踵が外側にずれること)になるため膝へのストレスも高くなります。

脚を組んで座る

イスに腰掛けた際に脚を組んで座ると股関節を取り巻く靭帯は緩み、股関節を支える力が弱くなります。
脚を組む際、上になる側の脚が必要以上に内転するので大腿骨頭の関節窩(かんせつか)はみ出ようとします。
その結果脚を組んだ側のお尻だけが弛むようになります。
悪い姿勢には他にもたくさんありますが今回紹介した4つは日常生活の中でも最も見受けられるものです。
これらの姿勢を日常生活の中で何気なくやってしまっている方は、その都度、悪い姿勢をリセットし、正しい姿勢にセットアップする必要があります。
昔からの不良姿勢を脳や筋肉が記憶してしまっているため始めのうちは違和感を覚えるかもしれませんが、繰り返し続けることでやがて違和感なく姿勢が保てるようになります。
意識から習慣、習慣から無意識、つまり意識することなく無意識にでも正しい姿勢を保つことができるようになればしめたものです。






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当サイトの編集長の佐藤伸一(さとうしんいち)です。
都内でトレーナーとして約20年活動し、その後、カイロプラクターとして約10年活動していました。
現在はフリーランスで活動していて主に健康や運動に関する情報を発信しています。

公式サイト:
https://shinichi-sato.info/

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