- Home
- 骨や関節のトラブルとその原因, 腹部・腰部の症状
- 脊柱管狭窄症とその原因とリハビリテーション
目次
一口に腰痛といっても実に様々なタイプの腰痛があります。
歩いていると段々、脚に痺れが出てきてしまったり、ひろがるような痛みが出てきてしまい、休みながらでないと歩いてられないなどの症状が出てしまうようなら『脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)』を疑う必要があります。
『休みながらでないと歩き続けられない』という症状は間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれるもので、歩いているうちに脊髄神経に負荷がかかり、神経を通じて下肢にしびれや痛みの症状が出ます。
間欠性跛行は脊柱管狭窄症にみられる特有の症状です。
主に身体の歪みからくる脊柱管狭窄症の発生メカニズム
そもそも脊柱管(せきちゅうかん)とはどこにあるのでしょうか?
脊柱(背骨)は椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨がいくつも連なってできています。
椎骨は椎体(ついたい)と椎弓(ついきゅう)からなり、その間にある空間(椎孔)が積み重なってできる管状の空間を脊柱管(せきちゅうかん)と呼びます。
この脊柱管には脊髄が通っていて、腰椎付近では馬尾(ばび)と呼ぶ神経束や血管が通っています。
脊柱管にはそれらの神経を守る役割があり、脊柱管の空間が保たれることにより脊髄や神経束が守られているのです。
先にも触れたように一つ一つの椎骨は独立しています。
その椎骨がバラバラにならないように数多くの靭帯(前縦靭帯、後縦靭帯、黄色靭帯など)や周囲の筋肉がそれらを保持できるようにサポートしているのです。
しかし、何かしらの原因でサポート力が失われると脊柱自体に歪みが生じるようになります。
脊柱の歪みはすなわち脊柱管の歪みを意味しているので歪みが強ければやがて脊髄が圧迫されるようになるのです。
サポート力が失われる原因には以下のような原因が考えられます。
- 靭帯が緩くなる、あるいは硬くなりすぎることで靭帯のサポート機能が失われてしまった。
- 筋力、柔軟性の不足によって身体が保持できなくなってしまった。
- 無理な動きをしたことにより椎骨の構造に問題が発生してしまった。
例えば不良姿勢の一つに『腰椎前弯症(ようついぜんわんしょう)』があります。
腰椎の前弯(腰の反り)が何かしらの原因で強くなってしまうと椎骨の棘突起(きょくとっき)と棘突起が互いにぶつかりあうようになるので、棘突起の付け根部分でヒビが入ってしまったり、骨折したりすることがあります。
ヒビが入ることによる痛みは『腰椎分離症』、腰椎分離症をきっかけに椎骨の位置がずれてしまい痛みがでることを『腰椎すべり症』といいます。
『腰椎分離症』と『腰椎すべり症』は、症状や原因が似ているために、同じようなものだと誤解している人も多いのですが、基本的には全く違う病気です。
腰椎すべり症の度合いにもよりますが、椎骨が滑れば滑るほど、それに伴い脊柱管は狭くなります。
やがて脊柱管内部を走行している脊髄を圧迫するようになり脊柱管狭窄症につながることもあります。
因みにこの変性すべり症は中年の女性に起こりやすいと言われています。
主に老化による脊柱管狭窄症の発生メカニズム
その他にも発症原因はありますが、その中でも加齢に伴う脊柱管狭窄症が一番多いのではないでしょうか?
一般に高齢になればなるほど脊柱狭窄症は発症しやすくなります。
何故なら加齢になればなるほど
- 脊柱管を取り囲む椎体や椎弓の変性するようになる
- 黄色靭帯(おうしょくじんたい)が肥厚するようになる
- 椎間板の変性による膨隆、突出するようになる
などが起きやすくなり、これに伴い背骨に歪みが生じ、脊柱管が狭くなるためです。
一般に年をとると多かれ少なかれ脊柱管は狭くなっていきます。
脊柱管狭窄症はどんな人がなりやすいのか?
それでは脊柱管狭窄症になりやすい方にはどんな方が多いのでしょうか?
先天的に脊柱管が狭い方は例外として脊柱管狭窄症になりやすい方は基本的に不良姿勢の方に多く診られます。
先にあげた腰椎前弯症の方は腰が反り過ぎて脊柱管が狭くなり、それに伴い脊髄が圧迫され痛みや痺れを誘発します。
逆に腰の反りがない方(フラットバック)では腰椎の椎間板が圧迫されすぎて椎間板が人よりも摩耗しやすくなるので椎骨自体に負担がかかるようになります。
これをきかっけに椎体や椎弓に変性(骨棘ができることもある)が生じ、脊柱管が狭くなるために脊柱管の中を通っている神経や枝分かれする神経と、神経に伴走する血管が圧迫されることで、神経が障害され、症状として腰痛や下肢のしびれなど、さまざまな不具合が起こるのです。
また、若いときに重労働で重いものを持つ職業で無理をしてたり、若いときに腰を痛めたことがある人、長時間運転する人などは加齢により、脊柱管狭窄症になりやすい傾向にあります。
あらためて脊柱管狭窄症はどんな症状なのか
脊柱管狭窄症は主に腰の痛み、腰の周囲の違和感とはり感、両足(片足もあります)の太ももからふくらはぎ、足の裏などにしびれや痛みがでるのですが、歩き出すと足がしびれて歩きにくくなったり、歩けなくなるのですが、前かがみでしばらく休んでいるとまた歩けるようになる(いわゆる間欠性跛行)というのが代表的な症状です。
その他に足先が持ち上がらない、階段でつまずく、スリッパが脱げやすいなど足に力が入りにくいという症状がでることもあります。
さらに悪化すると、歩行時に尿意を催すなどの排尿障害や便秘、会陰部(えいんぶ)に灼熱感(しゃくねつかん)などの異常が起こってきます。
脊柱管狭窄症は足の症状だけで、腰痛は全く感じない場合もあります。
【間欠性跛行(かんけつせいはこう)】
安静時にはなんともない人が、ある時間歩き続けていると、足の痛みやしびれ、脱力感が強まって、歩きにくくなったり歩けなくなるのですが、その場でしゃがむ、前かがみの姿勢になることで神経の圧迫から解放されて症状が楽になり、再び歩き出せるようになるという特徴的を持っています。
このような症状は循環器系の疾患でも見られるものですが、脊髄神経を圧迫しないように姿勢を変えることで楽になるのが、循環器系を原因とする症状とは違う部分です。
脊柱管狭窄症の治療
先に紹介したような症状が現れるようなら、まず、整形外科に必ず行ってください。
そもそも脊柱管狭窄症と思われていた症状が循環器系の疾患によるものだったということも考えられます。
なので、必ず、専門医に診ていただき正しい診断と今後のアプローチの仕方を教えてもらうべきです。
保存的治療(保存療法)
症状が出てから少なくとも数ヶ月は保存的治療をするというのが一般的です。
保存的治療では、コルセットや鎮静剤の使用などがあげられますが、ホットパックや牽引などの理学療法を行うこともあります。
手術治療
症状が重篤な場合は手術をおこない、神経の圧迫原因を除去することもあります。
すべり症などのない、加齢に伴う脊柱管狭窄症の場合には、骨(骨棘)を削ったり、あるいは変形した黄色靭帯が脊髄圧迫の原因となっているようなら黄色靭帯を切除してします。
この治療法には、従来、椎弓切除(ついきゅうせつじょ)がという方法がなされていましたが、骨をたくさん削り身体に負担を与えてしまうということから、開窓術(かいそうじゅつ)という方法が用いられるようになりました。
最近では内視鏡を用いて除去手術を行うことで、脊椎を支持している筋肉の障害を最小限に防ぎ神経の圧迫を取り除く方法や、棘突起(きょくとっき)を 二つに割ることで筋肉をまったく傷めないという方法なども開発されるようになりました。
勿論、全ての脊柱管狭窄症に対してこの方法が有効とは限りません。骨(骨棘)や黄色靭帯を削っても良くならない脊柱管狭窄症もあります。
それは先に紹介した腰椎前弯がきっかけで椎骨が前方向に滑ってしまっているタイプの脊柱管狭窄症です。
この場合には固定術というの方法が一般的に用いられます。
固定術は、分離、すべり症などにより、ずれてしまった椎骨と椎骨をつなげる手術が行われます。
先の手術より大がかりな手術になり(手術時間、出血量の問題が出てきます)また、手術の際、『インストゥルメント』と呼ばれる金属製のネジなどを使用するので患者さんが感染しやすい体質なのかどうかや、糖尿病があるかどうかも事前に入念に調べる必要があるのです。
これらの過程を経て、症状が落ち着いたとしても、今後、ご自身でも積極的に脊柱管狭窄症のリハビリを行う必要があります。
基本的には運動療法は医師の指示、理学療法士のもとで行ってください。
ここでは、その中でもっとも有名な『マッケーンジー体操』を紹介します。
マッケンジー体操は特にフラットバックになってしまったことにより誘発してしまった脊柱管狭窄症にはとても有効です。
しかし、腰椎分離、すべり症がきっかけで脊柱管狭窄症になってしまった方ではかえって逆効果になってしまいますので行わないようにして下さい。
必ず1日2~3回はこの姿勢になって、腰の負担を減らしてあげます。