何かしらの原因で長期にわたって頚椎にストレスがかかり続けると、それが元で『椎間板の変形』『椎骨の変性・変形(骨棘形成)』が生じてしまうことがあります。

これにより神経根や脊髄が圧迫されてしまい、『手に力が入らない』、『手先に痺れが出る』などといった神経症状が出ることがあります。
これを俗に頚椎症(けいついしょう)といいます。

頚椎症は主に加齢が原因でになってしまうことが多いのですが、若い方でも頚椎症になってしまうこともあります。
頚の形に何かしらの問題がある方(ストレートネック)や、繰り返し頚椎の長軸方向にストレスがかかるような運動を行っている方は要注意です。
特に外的な力を受けたわけでもないのに常に頚部に痛みを感じたり、慢性的な手指のしびれを感じる場合は、頚椎症の可能性があるので一度、整形外科に行って精密検査を受ける必要があると思います。

頚椎症とその自覚症状

頚椎症になると首周辺にコリやハリを感じ、場合によっては手が痺れたり、握力が弱くなるなどの異常をきたすことがあります。
頚椎症は『変形性頚椎症(へんけいせいけいついしょう)』と呼ばれることがあり、変形性頚椎症は圧迫される障害部位により、更に『頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)』と『頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)』の二つに分類することができます。
この傷害の症状に似ているもので『頚椎ヘルニア』という障害があります。
頚椎ヘルニアは腰椎ヘルニアと発生メカニズムは同じで、椎間板にある髄核が線維輪(せんいりん)を飛びだし、飛び出した椎間板が左右後方から出ている神経根を圧迫し、強い痛みと痺れを誘発します。
頚椎ヘルニアは圧迫される部分によっては頚椎症性神経根症や、頚椎症性脊髄症とほとんど同じような症状が起こるので、レントゲンやMRIなどで精密検査しなければ頚椎症なのか頚椎ヘルニアなのかを判別することはできません。

  1. 頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)
    脊髄から枝分かれした神経根が、頚部の骨の異常によって圧迫されて引き起こされる病気です。
    頚椎は椎骨と呼ばれる骨が連なって構成されています。
    椎骨には椎間孔(ついかんこう)と呼ばれる脊髄の通り道があり、その中を脊髄が走行しています。
    もし、この椎間孔が狭くなったり、頚の骨が変形して骨棘(こつきょく)が形成されてしまうと脊髄から枝分かれした神経根(神経の付け根)が圧迫され、頚椎症性神経根症を発症してしまいます。
    頚椎は胸椎や腰椎に比べると運動の範囲や使用頻度が高いため、胸椎などと比べてこれらの症状が進行しやすい状態にあります。
    頚椎症性神経根症では、片側の首の痛みや肩こり、手のしびれ、脱力などが現れる場合がほとんどですが、まれに左右両方同時に症状が出る人もいます。
  2. 頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)
    頚椎症性脊髄症は、中枢神経系である脊髄が圧迫され、手先の細かい作業が思うようにできなくなる症状です。(ボタンがうまくとめられない、箸が持てないなど)
    頚椎の変形・変成が生じると脊柱管と呼ばれる頚椎の中央の穴が狭くなり、脊髄が圧迫されるようになります。
    頚椎症性脊髄症は上肢の症状が片側だけではなく、左右両方に現れることがあります。
    軽度のしびれ程度ならしばらくは経過観察になると思いますが、悪化すると上半身だけではなく、やがて『足が持ち上げられない』『うまく歩けない』『排尿がしにくいなど』下半身にも症状が現れるようになってきます。
    ここまで症状が進行して日常生活に支障が出てしまうと最早、手術をしなければ改善はされないでしょう。
    保存治療があまり有効でない場合、進行の防止や脊髄麻痺の予防のために早い段階で手術を勧められる場合もあります。

頚椎症になりやすい頚とは

頚椎には椎骨と呼ばれる小さな骨が7個あり、横から見たときに頚椎は前弯(ぜんわん)と呼ばれる緩やかなカーブを描いています。
しかし、何かしらの理由でカーブが無くなってしまうと(ストレートネック:頚部が真っ直ぐになってしまう)頭部を支えることが困難になり、首や肩、背中などに強いストレスがかかるようになります。
初期の頃は首や肩こり程度で済みますが、それが悪化すると頭痛や寝違えが頻繁に起こるようになり、やがて手先の痺れなども発症するようになります。
この状態のまま何もしないで放置し続けると近い将来、頚椎ヘルニアや頚椎症に移行する可能性が高くなります。
このように頚椎症は単に老化だけでなくストレートネックが原因で発症してしまうこともあるのです。
ストレートネックは日頃の不良姿勢(スマホ、パソコンなどの長時間の使用により猫背などの悪い姿勢になってしまっている)によりもたらされることが多いのですが、交通事故やコンタクト系のスポーツ(ぶつかり合う)を長期にわたり続けることでなってしまうこともあります。
ストレートネックになると、頭部の重さ(5kg前後)が直接頚椎にかかってくるので頚の痛みや肩こり、肩甲骨周辺の痛み、頭痛、めまいや目の疲れ、吐気など様々な症状を発症するようになります。
こうしたいろいろな辛い症状は、筋肉の緊張と深く関連して起こっています。
頚椎周辺にはたくさんの筋肉や靭帯の組織が存在します。
ストレートネックになるとこれらの組織が過剰に引っ張られたり圧迫を受けるなどして無理な力がかかるようになるので頚部が緊張して上記のような症状が起きてしまうのです。
辛い肩こりや目の疲れ、頭痛などでマッサージなどを受けると、マッサージをし終わった直後は気持ちいいのに、施術が終わるとすぐにまた症状がぶり返すというこという方は一度、ストレートネックを疑った方が良いかもしれません。
そのまま、放置すると頚椎症になり、もっと酷い症状に悩まされることになるかもしれません。






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当サイトの編集長の佐藤伸一(さとうしんいち)です。
都内でトレーナーとして約20年活動し、その後、カイロプラクターとして約10年活動していました。
現在はフリーランスで活動していて主に健康や運動に関する情報を発信しています。

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